氷壁エリートの夜の顔

 廊下を抜けて、リビング・ダイニングに通される。
 この部屋だけでも、少なく見積もって私の部屋の倍はあった。

「……すごいところにお住まいであらせられますな」

 びっくりしすぎて、言葉が変になってしまった。

 整った部屋だった。余計なものは何一つないのに、冷たさは感じない。
 白い壁にダークブラウンの家具。ネイビーのラグとクッションが空間を引き締めていて、整然としているのに、どこかあたたかい。

 部屋の中央には、アンティークの丸テーブルとチェア。
 柔らかな間接照明の光が、テーブルに反射して、優しく部屋を包み込む。
 絵になる空間なのに、ちゃんと人が息づいている気配があるのが、結城さんらしかった。

 冷蔵庫を開けながら、彼が尋ねる。

「なに飲む? 泡、白、赤、クラフトビール」

「じゃ、クラフトビールを」

 そう答えたあとで、さっきから手に持っていた包みの存在を思い出す。

「あの、これ……今朝、作ったんです。お気に召すかわからないけど……」

 差し出すと、結城さんは袋を受け取り、ちらりと中をのぞく。
 その瞬間、ぱっと表情が明るくなった。