氷壁エリートの夜の顔

 私は彼の寝顔をじっと見つめる。
 整った顔立ち。どこか大人びた静けさ。
 まつ毛、たぶん私よりも長い。いや、世の中の女子の大半より長いかも。

 私は、握られていない方の手をそっと伸ばして、指先で彼のまつ毛に触れてみた。その瞬間、彼のまぶたがうっすらと動き、ゆっくりと目が開かれた。

「うわぁっ!」

 結城さんは反射的に声を上げて飛び起きた。けれど、左手はまだ私の手を握ったままで──そのことに気づいて、慌てて手を放す。

「ご、ごめん」

 戸惑うように彼が謝る。私はベッドの上に正座して、姿勢を正した。

「謝らないでください。……悪いのは、私ですから」

 結城さんは、両手で顔を覆うようにして、静かに深く息をついた。しばらくの間、昨晩の記憶をたぐるように黙っていたが、やがてぽつりとつぶやいた。

「あ……雷」

「そうなんです!」

 私は勢いよく頷いた。

「私、昔から雷が苦手で……。昨日は、ほんっとに情けないところをお見せしちゃって、すみませんでした」

 深刻な雰囲気にならないように、できるだけ明るい声で言ってみた。
 だけど、彼はまっすぐな目で私を見たまま、静かに言った。