氷壁エリートの夜の顔

* * *

 カーテンの隙間から差し込む朝の光がまぶしくて、私はゆっくりと目を開けた。
 ……すぐ目の前には、長いまつ毛を伏せた端正な横顔。

──結城さん⁉︎

 瞬時に意識が覚醒し、跳ね起きようとしたけれど──無理だった。
 彼の右腕が私の背中に回り、左手は私の手を優しく握っている。体が、動かない。

 状況を把握するために、私は目を見開いたまま深呼吸を繰り返す。
──そうだ、昨夜は雷が鳴って……。

 ようやく思い出した。
 雷に怯えて泣いてしまった私を、結城さんが黙って抱きしめてくれたのだった。
 背中をさすりながら、「大丈夫だよ」と耳元で囁いてくれた、その声もまだ耳に残っている。
 そしてそのまま、眠ってしまったのだ。

──やってしまった。

 あれほど高くて冷たかった結城さんの氷壁。その内側に、私は涙で入り込んでしまった。
 きっと、謝って済む話じゃない。

 それでも──彼の胸のぬくもりと、すぐ近くで聞こえた静かな鼓動を思い出すと、今でも少しだけ胸がざわつく。
 家族以外の男性に、あんなふうに抱きしめられたのは、もちろん人生で初めてだった。