心臓が、ぎゅっと縮まる。
 私は反射的にバッグへ手を伸ばした。

──ない。イヤホンが、ない。

 ノイズキャンセリングイヤホン──あれさえあれば、なんとかやり過ごせるのに。
 私は青くなり、バッグを逆さにして中身をすべて床に撒き散らした。でも、どう探しても見つからない。

──忘れてきてしまった。

 胸がじわじわと締めつけられる。不安で呼吸のリズムが掴めない。
 雷鳴が、近づいてくる。

 次の瞬間、窓の外が鋭く光った。
 一拍置いて、空を裂くような雷鳴が響き渡る。地鳴りにも似た重い音に、思わず声が漏れた。

 だけど、自分でも、どんなふうに叫べばいいのかわからない。
 助けて、誰か助けて!
 心で繰り返しながら、私はいつだってそれを口にすることができない。

 再び閃光が走る。私は耳を塞ぎ、頭から布団を被った。自分を抱きしめるように膝を抱える。
 震えが収まらず、私はまるで子どものように身を縮めた。

 こんなふうに、ただ息を殺して隠れるしかない自分が──あの日、お母さんを守れなかった自分が──情けなくて仕方がなかった。

「……どうした?」