「おーい、しゃくれー!あごー!あごー!」

「そ、そーゆーこと言うのやめて……欲しい……な……」

「なになにー?全然聞こえなーい」

「あ、あの……。だからっそーゆーこと言うの、やめて……ほしい!」

「うわっ。顎が出てる亜子様がお怒りになってまーす〜〜!!お〜こわいこわい!」



……わたしは小学生の頃、自分のしゃくれた顎をからかわれながら過ごした。

そのたびに落ち込んで、
こんなんじゃダメだ、強くならなきゃ、我慢しないでもっと言い返せるようにならなきゃ、と思い続けてきた。

そう、わたしの最大のコンプレックスは、

この「しゃくれた顎」

小さい頃から顔立ちは綺麗だねと言われ続けた。
ただしそれは……この「顎」が出てなければの話。

「残念ねー。せっかく綺麗な顔立ちなのにあの顎がねぇ」
「ほんとー。残念」

わたしが中学二年の時に亡くなった大好きだった母は近所の人がそう言ってるのを聞いて、心を痛めてた。

わたしもきついけど、お母さんも可哀想。
わたしが……。こんな顎さえしてなければ……。