こちら元町診療所

「課長、ここはいいから早く行って!」

『うん、ありがとう。やっちゃん!
 また後でね。』


こんなとこで先生と揉めている場合ではない!家でお姉ちゃんが苦しんでいる
のだから!


医事課から鞄を持って出ていく義兄を
見送りホッと深呼吸をすると、先程
よりも強い力で先生が私を腕の中に
閉じ込めた。


『‥‥もう浮気?』

「はぁ!?な、何言ってるんです?
 課長は義兄ですよ?お姉ちゃんが
 産気づいたって電話があったから
 パニックになっただけです!」


浮気って‥‥本気で言ってるの?
そりゃ確かに課長の肩にもたれかかって
しまったけど、それは不安からで‥


『義理でもなんでも、男だろう?
 それに課長さんと靖子は血が繋がって
 ないから今後は駄目、いいね?』


「‥‥‥」


『なんで黙るの?‥‥靖子?』


「こんな完璧な人でも‥嫉妬とか
 するんだなって思ったら、先生も
 普通の人なんだなって安心しました。
 ほら、職場なんで離れてください!」


何故かそんなことが嬉しくて笑いが
込み上がる


私のように自信がない人が、素敵な人と
付き合うと不安なのは分かるが、
多くの人にモテて欠けた部分を見つける
のが大変な先生でも、同じ感情があることを知れただけで幸せだなと思える


『金曜日‥覚悟しておいて?帰りに
 お姉さんの病院に顔を出すよ。』


えっ?


オデコに軽くチュッと触れた唇がすぐに
離れると、そこをすぐに手の甲で押さえ
焦った。


覚悟って‥‥あれ以上色んなことされたら身がもたないよ‥‥‥。


頭から湯気が出そうな状態をなんとか
落ち着けると、食事を急いで摂り、
定時で上がれるように仕事を始めた。


ガラッ



『‥‥ッ‥お姉ちゃん!!』


17時になると、急いで医事課を飛び出しタクシーに乗った私は、お姉ちゃん達が待つ産婦人科に急いで向かった。


産まれたって連絡が来てなかったから、
まだ苦しんでるのかなと不安になり
ながらも、家族ということを伝えると
、分娩室が備られている部屋のドアを
開けた。


『‥やっちゃん‥来てくれたんだ‥。』

「お姉ちゃん!体調ツラい?
 何か必要なものある?」


そばに駆け寄りお姉ちゃんの手を
ギュッと握ると、仮眠していたのか
お姉ちゃんが目を開けてこちらを見た。