こちら元町診療所

『残念だけど諦めて行っておいで。
 多分悪いようにはされないから。』


ヒッ!!


だったらもっと安心させる顔でそう言って欲しい!!


溜め息全開の綺麗な顔に不安しか
なかったけれど、無情にも忙しい日々が
過ぎてしまい、あっという間に土曜を
迎えてしまった。


インドア派の私には、数少ない友達とは
メールか電話で済ませる程で、外で
待ち合わせなんてあまりしないから、
それだけで緊張してしまう。


無理だったら俺の家に逃げてくれば
いいと先生は言ってくれたけど、
何処に連れて行かれるかも分からないし
、あの伊東先生から逃げれるなんて
思えない‥‥。


ソワソワしながら駅のロータリーで
立っていると、一際目立つ真っ赤な
高級スポーツカーがこちらに向かって
走ってくると、ブレーキ音と共に
ピッタリと私の目の前に停まった。


ガチャ


「ヒッ!!」


小さな街に全く似つかわしくない
出立ちで車から降りてきた先生に、
緊張からか背筋が綺麗に伸びる


は、派手っ!派手過ぎるよ‥‥


車もそうだけど、体のラインがピタッと
出る胸元の開いたドレスワンピースを
着こなし、長い髪の毛は綺麗に巻かれ、
10センチ以上あるピンヒールを美しく
履きこなしている。


やっぱり‥この人‥すごい人かも‥‥


『お待たせ!靖子ちゃん。
 来てくれて嬉しいわ!!』

「はぁ、こ、こんにちは‥。」


来なかったら次の木曜日が怖いし、
叶先生に被害が向けられそうで、
来るしかなかったんですよ?とは
言えない。


片やセレブリティ満載の人に対して、
普通のカットソーにパンツ姿の私を
並べられると罰ゲームのようだ。


『さぁ!今日は沢山付き合って
 貰うわよ!!覚悟してね!!』


顔面の圧に怯えつつも、強引に助手席に
座らされると、その後はもう何とも言えない運転に、死にたくないと思いながら
必死に堪えるしかなかった。


『着いたわよ‥‥ってあら、具合でも
 悪いのかしら?』




ピンポンパンポン〜

※公共の道路では、規定された速度を
守り、安全に気をつけて走行してください。

と心の中で唱えた。


それより‥‥ここは何処?


すでに疲れ切った心と体で車から
降りれば、目の前の立派な建物を
見上げた。


『welcome to my house!!』


えっ?

ええっ!!!?