『靖子は、好きな人とそうじゃない人
とで確実に違うことってある?』
「えっ?‥‥接し方とかそういうこと
ですか?」
『うん、何でもいいよ?』
突然想像していなかった質問をされた事に少し驚きつつも、先生の穏やかな表情を見て少し考えた。
例えば‥‥先生にはすることと、課長や部長、河野くんにはしないこと‥‥。
先生には思うけど、他の人には思わないこと‥‥‥。
「すみません‥‥難しいです。」
『大丈夫。それでいいんだよ。』
えっ?
『靖子がキスしたいと思う相手が
俺なら嬉しい‥‥。
抱き締めて欲しいとか、恋しくて
会いたいと思うのもね‥。
俺はそう言う気持ちを靖子にしか
向けてないし、他の人にはそう
思わない。大切なのは、自分が
相手の人とそういう事をしたいと
思えている時はずっと繋がって
いられるだろう?片方がそう思わなく
なったら、残念だけど終わりが来た
り離れたりもする。
俺は靖子の隣に居たいし、靖子の
事を考えたら愛しいと思う。
人それぞれ考え方も違うし、何が
正解かも分からない。靖子の好きな
ところや選んだ理由も勿論あるけど
、俺は靖子に対して思う気持ちが
今の答えだと思ってる。』
先生‥‥‥
洋太とのことを物語るかのような話に
胸が少しだけ苦しくなったけど、
私も先生と同じ気持ちだと素直にそう
思えた。
会いたいと思うのも、今みたいに手を
繋いでいたいのも他の人じゃダメだ。
「そんな風に思ってくれてたなんて
知らなかったです。
自分に自信がないとか、先生に
似合わないとかそんな事ばかり
考えてて‥‥。私も同じです‥‥。
全部取っ払っても、この手を
離したくないしそばに居たいんです。
なのでさっきのくだらない質問は
忘れてください。お願いします。」
先生の長い指に自分の指を絡めると、
少しだけ力を込めて握った。
『忘れないよ。』
「嫌です!忘れてください!」
『俺も嫌。‥だって‥靖子の頭の中、
俺でいっぱいでしょ?
そんな嬉しい事ないからさ。』
「んっ‥‥」
握った手を握り返してくれると、
そのまま引き寄せられた直後に、
唇が塞がれた。



