こちら元町診療所

もう子供じゃない‥‥。聞きたい事は
ちゃんと先生に聞こう。


言いたくないことは誰にでもあるし、
触れてほしくない事を無理に聞くのは
一方的だから、素直にまずは自分の
気持ちを伝えたい‥‥‥


自分の中でこう思えたのは、先生という
存在が思ってた以上に大きかったと
気付かされたからだ


買ってもらったゼリーを食べてから
薬を飲み、今は早く仕事に戻れるように
体をしっかりと休める事が、私が迷惑をかけた人に対してできる事だ。



目から流れる涙を両手で拭うと、
瞳を閉じ眠りについた。


次の日、1日お休みをもらい薬を飲んでしっかり体を休めたおかげで、熱も
下がり明日は仕事に行けそうな程に
回復していた。


棗先生の初出勤‥大丈夫だったかな‥

作り置きのおかずを何品か作りながら
部屋中の掃除や洗濯をし、先生や医事課のみんなに回復した旨のメールを送った。


ブーブーブーブー


電話?


「はい、もしもし。」

(『靖子?』)

ドキッ


「は、はい‥お疲れ様です。」


時計を見れば13時近くで、先生のこと
だから休まずずっとお仕事してたんだと分かってしまう。


(『声が元気になったって伝わるな。
 良かった‥‥。帰りに靖子の家に
 寄るから待ってて。』)


「えっ!?そ、そんなお仕事で疲れて
 ると思いますし大丈夫ですから。」


(『俺が会いたくて行くんだよ。』)


ドクン


電話越しの少し低いトーンの声に、
まるで耳元で囁かれているような
甘さに、心臓の鼓動が速くなる。


(『靖子?』)


「あ‥‥‥‥私も大志さんに
 会いたいです。」


真っ直ぐ思いを伝えてくれる先生に、
私も正直に伝えたくなった。


謝らないといけない事ばかりだけど、
まずは伊東先生とか関係なく、目の前
の先生の事だけを考えたかったから。


(『フッ‥素直だ‥‥早めに行く。』)


「‥はい、気をつけて来てください。」


電話を切った後も、耳に残る声に
胸が熱くなり恥ずかしくてそのまま
クッションに顔を埋めた。


体調をくずしておいてこんな考えは
とても不謹慎だ‥‥‥。


でも‥‥‥早く会いたい‥‥‥。
今は心からそう思えた。



ピンポーン



ガチャ


「‥‥‥先生お帰りなさい。」


ドアを開けた途端に飛び込んできた
愛しい人の姿に、胸がいっぱいになると
家の中に入ってきた先生の腕の中に
閉じ込められた。