こちら元町診療所

その後も忙しい日々を過ごしながら月締めや月頭のレセプト点検をこなし、
あっという間に10月を明日に迎え、新しい先生方が午後訪問する事になった。



『靖子さんドキドキしますね！
　写真だけ見たら美男美女でしたから、
　診療所がまた華やかになりそうな
　予感です。』


浜ちゃんってば‥
相変わらずミーハーなんだから‥‥‥。


でも、本当にそれが真実なのだ。


叶先生の容姿は申し分ないほど
素敵なのだが、整形外科の医師はかなりの美人で、外科の医師は叶先生に
劣らない容姿の男性だったのだ。


叶先生の知り合いというか、回りには
そんな人ばかりなのかと思うと、
自分の容姿を責めたくもなる。


「業務も増えるし、外科や整形の
　レセプトは見たことがないものや
　算定が難しい物もあると思う。
　内科だけだと労災や事故による自賠
　などもなかったけど、今後はそういう
　患者さんも増えるかもしれないから、
　間違えないよう少しずつ慣れて
　いかないとね。」


叶先生に医師が変わっただけでも
4月から目まぐるしくハードな日常に
変わってしまった。


スタッフに恵まれているし、叶先生に
癒されてやる気が出ている女性が
殆どだから、みんな忙しくても不思議と
文句は言わないけど、今度の2人とは
どうなるだろうか‥‥


先生が厄介と言ってたことが
ずっと引っかかってはいるけど、
仕事は仕事としてやるしかないのだ。


今まで第一診察室しか使用していなかった為、浜ちゃんと安田さんと3人で
第二診察室の掃除や設備を整え、
待合にも分かりやすく、診療科と
当日の医師のネームプレートを掲示する
事にした。



「棗　奏真（なつめ　そうま）
　先生と、伊東　蘭（いとう　らん）
　先生‥‥どんな人だろう‥‥‥」


『こんな人だよ？』


えっ！？


「キャーーー！」


いきなり背後に人の気配を感じ驚いた
私は、横を振り向いた途端にあった
綺麗な顔に思わず年甲斐もなく声を出してしまった。


ビ‥ビックリ‥‥した‥‥。


いつから居たのか分からないけど、
あまりに近いその距離感に、初めて
叶先生と会った日を思い出してしまった


ガラッ


『中原さん！どうかした！？
　‥ッ‥はぁ‥‥お前かよ‥。』


私を見下ろす叶先生の視線がすぐに男性に移されると眉間に皺を寄せ綺麗な顔が
みるみる歪んでゆく