こちら元町診療所

だからこそ、あの時間が梨花のことで
一瞬で壊れたことが信じられなかったし、受け入れられなかった。


親友と思っていた人と、最愛の人、
2人に裏切られた私の気持ちをあなたは
分かってくれるはずはない‥‥。


「洋太‥‥。過去にはもう戻れないし、
 私はさっきも伝えたけど大切な人が
 いる。もし、あなたに後悔と少し
 でも申し訳ない気持ちがあるなら、
 愛する人を不安にさせない生き方を
 全うして欲しい。その相手は私じゃ
 ないから。」


『靖子‥‥。もう以前の靖子じゃない
 んだな‥‥。あの頃はこんな風に
 強くなかったから。』


「私、洋太と付き合ってたとき
 本当に幸せだった。この気持ちは
 今でも変わらない。でもそれは
 もう‥‥過去のことだから、
 これで本当に会うのは最後にして?」


嫌でもあの頃の楽しかった日々を思い出してしまう。‥でも同時にそれ以上の悲しみも思い出してしまう。


私の気持ちが伝わるかは分からないけど、前を向いて洋太の目を見てしっかり
と思いを伝えた。



『分かったよ‥‥‥俺もあの頃2人で
 過ごした時間は本当に楽しかった。
 沢山傷つけてごめん。
 ‥‥それじゃあ元気でな。』


「うん‥‥洋太も。」


最後に見せてくれた笑顔は、あの頃を
思い出させる優しい表情で、泣くのを
グッと堪えつつ、洋太を笑顔で見送った


誰にだってやり直したい過去はある。

洋太が何を話したかったかは
分からないままだけど、過去を変える
ことは出来ないから前を向いてこれから
生きて欲しい。


私が先生と出会えてこうして前を向けて
いるように、洋太にもそうあって欲しい
と願うだけ。



「はぁ‥‥」

『フッ‥‥頑張ったな。』


先生‥‥‥。


上を向いた途端に両目から涙が溢れ、
それを見た先生が私を抱き寄せて
腕の中に閉じ込めた。


1人じゃ絶対あんなこと洋太に会えなかったのに、先生と繋がれた手が本当に
温かくて安心して、私に勇気をくれた。


「‥‥‥先生のお家に今日も泊まったら
 ダメですか?」


ここまで来ておいて、1人になりたくないなんてとんだ我儘だと思う。


それでも今この手を離すことが私には
出来そうになかった。


『そんな可愛い事言われて俺が
 断ると思う?‥‥さぁ一緒に帰ろう。
 靖子の気持ちを伝えてくれて
 ありがとう。』


先生‥‥‥


手を繋いだまま来客用の駐車場に戻ると
、荷物をまたトランクに入れてくれた先生が私を見て何故か嬉しそうに笑った