こちら元町診療所

キッチンから出さないと言うように、
通せんぼされた私は、腰に手を当てて
先生を見上げた。


どうせ言うまで通してくれないって
言うのは分かってるし、ここでずっと
こうしてたら遅刻してしまう。


綺麗な顔で見下ろされて、声を
発しようとするのを躊躇いつつも、
咳払いをしてからもう一度先生を
見上げた。


「大志さん仕事に行きますよ!」


半ば諦めモードでそう伝えたると、
一瞬真顔になった先生が私の腰を
抱き寄せ腕の中に閉じ込めた。


『もう一回‥‥』

「‥‥大志さん‥でいいですか?」

『ん‥‥それ以外はもう禁止‥‥』


なんだそれ‥‥と思いつつも、
子供みたいに我儘を言う先生なんて
滅多に見られないと思い、腕の中で
笑いを堪えていた。



「先生そろそろ仕事に行かないと、
 本当に遅刻します!!」


いつまでこうしているんだろうと、
グッと胸を押すと、先生の右手が私の
顎を上に向かせ、あっという間に唇が
塞がれてしまった。


「んッ!‥‥ッ‥‥‥」


『先生って言ったらキスするよ?
 15分後に家を出るから準備して
 おいで。』


「‥‥‥‥ッ」


啄むような甘いキスを落とした後、
チュッとリップ音をたてた先生は、
真っ赤になっているだろう私を見て
クスクス笑いながら洗面所へ行ってしまった。


こんなの困る‥‥!その都度こんなことをされてたら心臓が保たない‥‥。


洋太に触られたらあんなにも嫌だった
のに、キスされて嫌な気持ち一つ感じて
ない自分の顔を両手で覆う


はぁ‥‥勘弁してほしい‥‥


こんな中学生みたいなドキドキ感を
言葉や態度で示してくる先生と
どう向き合えばいい?


溜め息を吐きつつも、一緒に出勤し、
お弁当を作れなかった私の為に、
オシャレなベーカリーに寄ってくれ、
サンドイッチまで買ってくれた。


そんな甘い生活が3日、4日と過ぎ、
洋太の接触も見られないからと、
週末は一度家に帰ることにした私は、
金曜日、夕食を一緒に食べた後
マンションまで送ってもらった。


『部屋の前まで送る。』


「えっ!?大丈夫ですよ。ここ一応
 オートロックですから‥。」


荷物が入ったキャリーケースを
トランクから取り出すと、そのまま
エントランスに歩き始めた先生を
追いかける。


洋太も流石にここまでは来ないと‥‥


えっ!?