こちら元町診療所

「どうかした?相談なら聞くけど、
 何かわからなかことでも」

『あっ‥‥あのぉ‥叶先生って‥その
 恋人とかいらっしゃるんですか?』


ん?


頬を赤らめる彼女に呆気に取られ
目が点になった私は、パチパチと
瞬きをする大きな瞳に釘付けになった。


この年頃の綺麗な女の子からしたら、
叶先生は王子様のような見えてしまう
のも無理はない。


あのルックスで高身長、独身の医者ともなれば誰もが隣に並んで立ちたいからね


「桐谷さん?ここは恋愛は自由よ。
 ただ公私混同されてミスがでるよう
 だと困るからそこはしっかりと
 して欲しいな。」


『分かってますぅ。ただ‥中原さんが
 先生と親しそうだったので‥』


「あ、あれは親しいんじゃなくて、
 揶揄われてるだけだから!
 私みたいな地味で何も取り柄がない
 女が面白いだけよ?
 相談はそれだけ?今日は疲れてると
 思うからゆっくり休んでね?
 お疲れ様。」

『じゃあ‥‥私頑張ります!!
 お疲れ様でーす。』


若いって素直ですごい!!
私が21、2の時なんてあんなに自分の
思いを他人に伝えれていただろうか‥。


思い切り伸びをして残りの事務仕事を
片付けると、処置室を通って診察室の
カーテンをそっと開けた。


「お疲れ様です。中原です。」


パソコンのキーボードをカタカタと打つ
音に、カルテ入力をしているのだと
思いながらも、約束をしてしまった
ので仕方なく顔を出しに来た。


ちゃんと休憩してるのかな‥‥‥。
毎日すごい人数を診察して、こうして
遅くまで残ってるし‥‥。


『お疲れ様。診察するからここに
 座って?』

「あ‥はい。」


患者さんが座る丸椅子に腰掛けると、
区切りのいいところで事務作業を終え、
私の方にくるりと向き直った。


『‥‥体調に変わりはない?
 必要なら投薬も処方するから。』


頬に触れた手が目蓋や眼瞼などを
至近距離で近づき診察し始め、何となく
視線を合わさないように心掛ける


こんな綺麗な顔で見つめられたら、
患者さん達がメロメロになるのも分かる
気がするな‥‥


「ふらつきが偶にありますが、休めば
 平気です。それより先生こそきちん
 と休まないと倒れますよ?」


『そうだな。‥それじゃあ一緒に
 ご飯でも食べに行かないか?』


えっ!?