こちら元町診療所

医事課に新しい事務員！？
そんな話聞いてないんですけど！？


面接などを行った話も聞いてないし、
金曜日に出勤した際に、部長は何も
言っていなかったのに急に何故？


『4月から異例の業務の忙しさに、
　市が募集をかけていたんだよ。
　安田さんは医療事務歴20年の
　ベテランだ。学ぶ事も多いと思う。
　桐谷さんは資格を取ったばかりだが、
　1年経験があるので、中原くん、
　指導を頼むよ。』


『『よろしくお願いします。』』


「は、はい‥よろしくお願いします。」


突然のこと過ぎて、若干パニックにも
近い状態だけど、一気に2人も増える
なんて嬉しくて堪らない


始業30分前になった為、慌てて受付の
準備をしながら説明する事にした。


ベテランの安田さんには会計補佐に
入ってもらう事にして、桐谷さんには浜ちゃんの受付の補佐に入ってもらおう。


会計はミスしたら返金やレセプトにも
関わるから、少しずつ慣れて行く中で
会計に向いてるようならその時また
考えよう。


『8時30分になったら、シャッターを
　開けて受付をスタートします。
　既に待合には番号札を手にした
　患者さんがいるので、1番の方から
　順に受付をしていきます。』


ふふ‥‥浜ちゃんが先輩になる姿を
この目で見れるなんて、親心か感動して
目頭が熱くなる


「あとは‥そうですね‥‥」

『靖子。体調はどう？』


ﾄﾞｸﾝ


安田さんに業務内容を教えていた私は、腰を引き寄せられたこととあの声に
また心臓が反応してしまった


「先生！！ビ、びっくりするじゃ
　ないですか！！」


慌てて腰に巻き付く手を勢いよく
雑に振り払うと、周りの視線が一斉に
先生に向けられている事に気付く


こんなみんながいるところで
全く何を考えてるんだか！！


今日新しく入られた2人も当然先生に
釘付けで、この絡みを変に思われるととても困ると思った。


『フッ‥‥元気そうだな。
　あまり無理をするとまた繰り返す。
　午後一度診察に来るように。』


「えっ！？あ、はいはい、
　分かりましたから早く診察室に
　戻られてください。」


手が頭に伸びて来たのを上手く交わすと、先生の体の向きをクルリと変えて
背中を強めにグッと押した。