あの日から1週間が経ち、
お姉ちゃんの家に戻る前に自分の家の荷物を整理したり掃除をしていたら、また
あの高級車が停まっていたのだ。
大志さんのお母さんは次の日には
意識も戻り順調に回復しているとは
聞いていたので安心していたけど、
存在感のあるこの車に足が固まる
どうしよう‥‥大志さんにとりあえずメールだけしないと‥‥‥
スマホを操作し終え、ここで引き返す
わけにもいかずマンションに向かうと、
運転席のドアが開き、見慣れたあの
秘書の方が私にお辞儀をした
『こんばんは、中原様。』
「こ、こんばんは‥‥。」
見てはいけないと思いつつも、後部座席
に視線がうつると、案の定その窓が
ゆっくりと下がり、唾をまたゴクリと
飲み込んだ。
『こんばんは‥初めましてだね。』
えっ?
てっきりあのお母様がいるかと思った
のに、今度は見たことのない男性に
目が見開く。
この人が誰なんて言わなくても分かる。
大志さんによく似ている整った容姿と
微笑んだ表情が同じだったから
「は、初めまして。中原 靖子です。」
『大志と蘭の父と言えば分かるかな?
叶 亘です。今回は花絵‥‥妻が
迷惑をかけたようだね。』
「い、いえ‥‥迷惑なんて‥‥。
驚きはしましたが‥‥。」
車に乗るように言われ、静まり返った
2人きりの車内で何処を見ていいのか
すら分からない。
奥さんが倒れたと聞き、日本に帰国された事を聞き、帰る前に私に会いに来た
事も話してくれた。
あの強面のお母さんとは違って、驚く
ほど温厚な話し方に、次第に私も体の力が抜けていったのだ
『中原さん。大志に婚約者がいることは
聞いてるだろうか?』
「はい‥知ってます。」
『そうか‥。彼女はね、会社としては、
大志が結婚すれば双方共に利益が
得られるパートナーでもあるんだよ。
それに、知性や教養も兼ね備えて
いる。花絵が反対するのも少しは
分かってもらえるだろうか?』
そんなの‥付き合う時点で分かってたけれど、背伸びをしても変えられない仕方のないことで悩むよりも、真っ直ぐ愛情を向けていられる自分を選んだのだ



