こちら元町診療所

「こ、こんにち今日は‥」
『ッ!大志様大変です!!花絵様が先程
 から急に胸を押さえて苦しみ出して!
 今ご連絡を差し上げるところでした
 !!早くこちらに!!』


えっ?


出迎えてくれたあの秘書の方が焦って
話すのを見て、大志さんは黙ったまま
急いで部屋に急いで入ったので、
私もそれに続いて部屋に入った。


『母さん?どこが痛みますか?』


呼吸が上手く出来ていない?
一体どうしてしまったの?


『靖子!今すぐ救急車を呼んで?』

「は、はい!!」


何か話したそうなのに、それすら出来ない状態に、仰向けにソファに寝かせた
大志さんが、お母様の様子を見たり
していると、足のふくらはぎの辺りを
触ると何かに気付いたようだった。


「もしもし、救急車を一台お願い
 します。場所は○○ホテル21階
 2105号室です。」


『電話変わって?』


お母さんの脈を測りながら救急隊員に
症状などを説明している大志さんに
何も出来ず、緊張と不安からか、心臓の音だけが煩く耳に響く。


こんな時私は所詮事務員で、
大志さんはやっぱり医師なのだ。


誰かを助けたいという気持ちが行動に
現れていて、落ち着いて冷静に判断する
その姿をただ見守るしかできなかった。


『よろしくお願いします。』


救急隊員に運ばれていくお母様に
秘書の方が付き添い、私たちも後で
病院に行くことに決めた。


話し合いなんていつでも出来るから、
今は回復されることをただただ願うばかりだ‥‥



『こんなことになってすまない‥‥。
 疲れたし怖かっただろう?』


大志さんが診断した通り、
病院に運ばれた後でCT撮影をすると、
肺の静脈に血栓が見つかり、すぐに
迅速な処置が行われた。


首を振りつつも一安心したのか、
横に座る大志さんの腕に手を絡めると
そっともたれた。


良かった‥‥‥。
血栓が出来る場所によっては危険な
病気だと聞き怖くなったのだ。


「私‥今日は帰ります。」

『送ってく。』

「駄目ですよ。大切なお母様なら
 今日はそばにいるべきです。」

『靖子‥‥‥』

「明日もお休みですし、
 また落ち着いたら連絡ください。
 大志さんも頑張りましたね‥‥。
 怖かったでしょうに‥‥。」


腕の中に私を閉じ込めると、大志さんが
いつもより少しだけ私を強く抱きしめた。


『母さん』と呼ぶ大志さんの声が、
とても優しかったのが嬉しかった。


誰だって身近な存在に異変があれば
動揺するはず。それが医者であっても
変わらないと思うから今は素直になって
欲しい‥‥そう思えた。