『花火(はなび)、私達昨日から付き合い始めたの』

珍しく照れながら話す蛍(ほたる)ちゃん。

『でもこれからも変わらず3人で過ごそうね』

そんな綺麗事を綺麗に言える爽(そう)くん。

そうだよね、昨日の2人はなんだかそんな雰囲気だったよね。

私は氷が溶けかけた水筒の中身をひとくちだけ飲んで、

『わぁー!いつの間に!?嬉しい!おめでとう!』って自分の言いそうな台詞を口にした。

その後も良かったねとか、告白はどっちからしたの?なんて自分の傷をえぐったりしながら、ニコニコ笑って祝福した。

嬉しいよ。大好きな2人が両思いになるなんて。

でもね、蛍ちゃん、言えなくてごめん。私も爽くんが好きなんだ。



入学式、席が近くだった蛍ちゃんと話していたら、ぬるっと爽くんも交ざってきたよね。

背が高くて眼鏡を掛けてて優しい笑顔の爽くん。男の子と話すの、ちょっとだけ緊張したけど、不思議な柔らかい雰囲気ですぐに三人打ち解けたよね。

お母さんにその話をしたら、今の子は男の子も女の子も関係なく仲良くなるのねってビックリしてたよ。

三人で美味しいグミとか食べたりして、楽しかったな。

私が忘れ物しないように、前日にラインしてくれたりもしたよね。お兄ちゃんみたいで優しくて安心できる、そんな爽くんが好きだったな。

どうしよう、今、まともに蛍ちゃんの顔が見れないよ。大人っぽい綺麗な黒髪のロングヘアー。切れ長のモデルさんみたいな顔。

爽くんだってしっかりしてるのに、蛍ちゃんはもっとお姉さんっぽくて、爽くんのネクタイを直したりしてたっけ。あ、私のスカートが綻びた時も魔法みたいに直してくれたよね。

そんな素敵な二人が付き合ったのに、どうして私は100%の気持ちで祝福できないんだろう…


色んな気持ちがぐるぐるする中、耳を疑う言葉が素敵な二人の口から飛び出てきた。