「……なんだよ?」
「お兄ちゃんは?なんかさっき、慌てて出ていったみたいだけど」
「あ~なんか、母ちゃんが財布忘れたから持ってきてほしい?とかで電話があって、出ていったけど……なんか用?」
「ふ~ん、そうなんだぁ」

 と、美姫はにやにやしながら部屋に入ってくると、胡座をかいている俺の膝の上に座った。

「ちょっ、なんだよ!」
「ヒロくん、こういうの好きかなぁって♡」
「別に好きじゃねぇわ。重いだけだわ」
「失礼ね~。そんなんだから、女の子にモテないドーテーさんなのよ」
「バッ!?ドッ!お前、意味分かってて言ってんのか?」
「分かるわよ、そんなの。女の子と付き合ったことない男の子のことを言うんでしょ?」
「ああ……まあ、うん、そうだけど……」

 こいつ絶対「童貞」の意味、ちゃんと分かってないんだろうな……そう思いながら俺はため息をついた。

「ヒロくんフツメンだから、絶対女の子にモテないでしょ?」
「うっせーわ。お前には関係ないだろ」
「だったらぁ、ミキがヒロくんの彼女になってあげよーか?かわいそーなヒロくんのために、一肌脱いじゃうよ♡」
「お前さあ……まじで、どっからそんなこと覚えてきたんだよ。前までそんなんじゃなかったのに……」

 はぁっと、俺はまたため息をついた。