「うっ、げ」
「うーわ、また来たのぉ?うっざぁ」

 大地の家に来るなり、大地の妹の美姫が玄関にやってきた。

「最近、家に来すぎじゃない?あーはぁ、もしかしてぇ~ミキに会いに来てるんでしょぉ?キッショ!」
「はあ?ちげーし。ゲームしに来てるだけだし」
「うそつきぃ。大好きなミキちゃんに会いたいから『ゲームしに来た』ってこうじつ?作って来てるんでしょ~?この、ヘ・ン・タ・イ・さん♡」

 そう言って、美姫はニヤリと笑った。

「あーも!違うつってんだろ!」
「あ?もしかして怒っちゃった?高校生のクセに、小学生の言葉で怒っちゃうとか、ヒロくんのざーこざーこ♡」
「美姫!いい加減にしろ!これ以上いらんこといったら、お兄ちゃん怒るぞ!」

 と、大地が言うと「はいはぁーい」と、美姫は頬を膨らませ、階段を上がって自分の部屋に入っていった。

「……お前まじ、あいつになに教えてるんだよ」
「ちげーよ、俺じゃねーよ!……でもほんと、なんであいつあんなこと言うようになったんだろ?ちょっと前まではそんなこと言うやつじゃなかったのに。しかも、ヒロにだけ……」

 美姫は大地の妹で、小学四年生。半年くらい前、大地の家に遊びに来た時に初めて美姫に会ったけど、その時はもじもじしながらぺこんと会釈し、走って部屋の方に逃げていった。それからは、俺が大地の家に来る度、頬を赤らめて「こ、こんにちは……」と、もじもじしながらそれだけ言って、逃げるように走っていった。
 なのにここ最近、美姫は俺に会うたびにあのような態度を取るようになっていた。

「なんだろうな~俺、なめられてるのかな?」
「ごめんな、まじで。ムカついたら遠慮無く怒っていいからな」
「お~……」