「はい、じゃあ次わたしの番!」
フミアキが話してるの聞いてたら わたしも言いたくなった 勇気もらえた気がしてた
「わたしはフミアキに転校のこと聞いた時 なんかすっごく無性に腹が立った なにに対してなのかわかんないけど『なんで?!』って腹が立った」
「だからフミアキが『ごめん』って言った時に感情が爆発してた…」
うん、わたしちゃんと言えてる
「フミアキの気持ち置き去りにして腹が立ってた 自分の気持ちだけでやんなってた その自分の気持ちすらはっきりわかってないのが苦しかったし悔しかった」
「いっぱい考えて、考えるのがやになった なのに頭から離れてくれん!」
「きっとこれがフミアキが言ってた友だち作らない理由なんだ 誰とも親しくならない理由なんだって思った なるほどって思った そう思ったら知らない内にわたしはフミアキに対してそういう態度になってた」
言葉が溢れてくる… どうしよ、とまんない
「自分でわかっててもフミアキに『おまえが殻に籠もるんかよ』って指摘されて苦しかった でもどうすることもできなかった だって自分の気持ちに気づけてなかったから」
「こんなに苦しくて理由《わけ》わかんないのに周りはわたしに『成長してる』って言う 『よかったね』って言う…、なんにもいいことなんてないのに…」
「でもね、なんもないことなかったんよね それに気づかないようにしてたんかも だからとりあえず素直になろうと思ったんだ」
「きっと今こうして話してる瞬間もわたしの頭はどんどん整理されてきてる フミアキにちゃんと伝えようって想いが鮮明になってきてる」
「だから、素直な気持ちひとつひとつフミアキに伝えてく 言ってく そうやって素直に話せたらきっとわたしは気づくんじゃないかなって」
まくしたてる様に出てきちゃう言葉がとまんない!
でも、とまんない言葉を止めようとは思わなかった
「うん わかった んじゃおれはなんにも言わない
ネオンの言葉ちゃんと聞いとくわ」
わたしは大きく息を吸って深呼吸をする
「じゃ言うね、フミアキが赤毛のアン読んでて嬉しかった、本読んでて嬉しかった、いろんな本の話しができてるの楽しかった、本の貸し借り楽しかった、弟妹想いで嬉しかった、一緒に買い出し行けて楽しかった、図書室で昼休み過ごせたの楽しかった、文化祭でオバケに扮したフミアキおもしろかった…」
箇条書きみたいなわたしの気持ち
指を折りながら数えるようにフミアキに伝える
「フミアキのいろんなこと知れたの嬉しかった…わたしのことたくさん話せてわかってもらえたの嬉しかった…わたしとなんとなく似てて嬉しかった…フミアキのいろんなこと知れて嬉しかった…男子苦手なわたしが自然と話せてたの不思議だった…」
「だからね、だから…転校するって聞いた時わたしの頭ん中まっ白になった わたしの楽しいや嬉しいがぜんぶなくなっちゃう、奪われちゃう、なんで?なんで?ってなってた…だからきっとわたしは腹が立ったんだって」
はぁはぁはぁ…言ったそばから不安になる
言い忘れてることないかな?って…
「よくそんだけ考えれたもんだ 感心するわ これはさすが女子って言うんかな? それともネオンだからなんかな?」
いつものつまんないこと言うフミアキ
それでもわたしの言葉を待ってるのがわかる
「ふざけんな? わたしは至って真剣に考えたんだ
だってフミアキと知り合ったのって正直二学期始まってからくらいだからな」
「そうだな、お互い同じクラスになっててもなんも話したことないくらいだったよな 挨拶くらいか…」
「なのにわたしの二学期はほぼフミアキに占領されてた 今もこうして振り回されてる そりゃどういうこと??ってなる」
「それを言ったらおれだってそうだ 今までこんなに濃密な二学期なんて過ごしたことないわ」
笑い合ってた お互い同じような時間を過ごしてたんだろうなって思えた
「で? 答えでたのか?」
「うん でもな、それをハッキリさせるためにはもっとフミアキのこと知りたいって思えるかなんよな」
「やっぱまっすぐだわ ネオン 不思議だけどおれもネオンと同じ きっと臆病なんかもな?おれたち」
「臆病…か そうかもね でもそんなことどっちでもいいじゃん! 臆病なりにがんばろ?」
「だな! じゃとりあえずだ」
「とりあえずなに?」
「もうすぐテストじゃん? 毎日一緒にテス勉しようぜ!!」
「なるほど! いいね! 図書室行って、図書館行って、いっぱい勉強しよ!!」
「わたしたちに残された時間でわたしたちに何が在るのかハッキリさせよーよ!!」
「たぶんおれのがハッキリしてんだろうな…」
「なに? なんて?」
「ひとりごと」
ボソッとフミアキがなんか言った
ちゃんと聞き取れなかったけど大事なことならもう一回言うよね、それよりも今はこれからの毎日に期待してた 大切な時間を無駄にしたくなかったから



