謳い文句はそう、確か、令和の顔面国宝、だったか、それとも、AIよりも整った顔、だったか。
とにかく、彼の登場は間違いなく一世を風靡した。CM、ドラマ、映画────毎日何かしらの媒体で彼を目にする。

そうして売れっ子俳優の名を手にした彼は、わたしたちの中ではもっぱらよく噂になる。



八重樫翔───彼のスキャンダルを撮ったものは、未だ、居ない。



何日も張り付いた先輩が、アイツはダメだ、と目の下に漆黒のくまを作りながらぼやいていたことが、あった。
何がどうダメなのか詳しく聞いたわけじゃないけど、とにかく生活が見えない、ということだけはわたしの耳にも届いていた。


本当に生きてるのか怪しい、プライベートを見つけられない、と死んだ魚の目で先輩笑っていて、それを見てああどうかそんなノースキャンダル王子のスキャンダルを暴けだなんて、編集長に命じられませんように、とあの日のわたしは祈っていた。