「あなたの車側に傷が出来てて、確認して貰えませんか?」と男は車体を指さした。
こすった感覚はなかったはず、清廉潔白なはず、いざと言う時はドライブレコーダーもある。

ただとりあえず汚名を着せられている状態なわけで、このまま扉越しに会話するわけにもいかない。

逃げそうで怪しいとか思われるのは癪だし、一応社用車だからなにかトラブルになっても面倒。だから、車から出た。それが間違いだった。



車体から降りて、扉を閉める。
「わたしではないんですが、確認だけします。どこ、ですか?」と強気な語気で発した刹那。


男は突然、顔を晒す。情報を、開示する。



「やっぱり、そうでした」

「…え?」

「すみません、たまたま見えてしまったから。今だなあと思って」

「あの、何言って、」