トントン、と。窓ガラスをノックされたのは、ちょうどカメラとPCを接続した瞬間だった。
一瞬心臓がどきりと跳ねて恐る恐る窓ガラスを少し開けば、知らない男性の声。



「…あの、すみません。いまさっきここに車、停めましたか?」



顔は見えない。
大きなサングラスと真っ黒いマスク、そして目深に被ったキャップ。彼がわたしに与える情報は、著しく少なかった。



「はい、そうですが、」



扉は開けない。一応ね、一応。最近世の中物騒ですから。



「隣の車、なんですけど、……」

「はい…?」

「こすりました?」

「…えっ」



サーっと血の気が引く感覚。
この感覚、免許取り立ての時にも味わったな、とどこか冷静に思い出しつつ、いやいやそんなことを言ってる場合じゃない、と一瞬で現実へ。