* * *
───そして、深夜0時。
都内のとある地下駐車場。ついさっき撮った不倫現場の写真たちを確認すべく白線の中心に車を停める。
…ああ、ほんとよく撮れているもんだ。顔だってバッチリわかる。
慣れないカメラに四苦八苦していたあの頃のわたしはもう一生戻らない。
辞めたい、と思ったことは数え切れないほどあった。
だけど、結局ここにい続けているのは、夢を捨てきれていない、わたしの弱さなんだろうか。間違った方法でも繋がりを持ちたいと、そう思ってしまう弱さゆえなんだろうか。
連日の徹夜のせいで身体はバキバキだった。一刻もはやく家に帰って休みたい。が、何があるかはわからないから、わたしはまずこの写真データを会社のファイルにアップロードする必要が、ある。
嫌だなあ、本当に。先輩から教わったことを忠実に今でも守っているわたしって、ばかばかしい。
「写真を撮ったら死んでもそれを会社に届けるために何よりも早くバックアップしろ、送れ」と真面目な顔して言った先輩は本当に頭がおかしいと思っていたけれど、結局わたしもおなじ、ということか。


