本当は、もっと問いかけるべきことがあった。
勝負か否かの前に、なぜわたしの名前を知っているのか、なぜわたしが記者だとわかったのか、なぜわたしなのか、なぜ、どうして。
彼が答える気がないにしても、問いかけるべきだった。
だけれど、嫌な音だったはずの心臓の鼓動は、いつしか興味の音に変わっていて、悔しいけれど、この胸の高鳴りを否定出来そうもなかった。
本当、嫌になる。あんなに嫌悪していた癖に、結局わたしも、この職業に半分以上身体を浸してしまっているらしい。
「……絶対、すっぱ抜かせてくれるの?貴方の秘密」
わたしより背の高い彼の尊顔を睨みつける。もう、覚悟は決まっていた。
「───もちろんだよ。僕は嘘をつかないから」


