「その勝負、もし、わたしが、勝ったら?」

「…………そうだな、もしきみが勝ったら───僕のことを暴くことが出来たら、センセーショナルなスキャンダルを、僕のとっておきの秘密を、きみにあげる」

「っ!?八重樫翔の、スキャンダル、」

「こんなチャンスは、無駄に出来ないんじゃない?だって、」



───僕のそれは、きっと、きみたちは喉から手が出るほど欲しいよね?



距離がまた1歩近づき、わたしの耳元に彼が落とした言葉が、とても嫌な響きをしていた。


八重樫翔の、スキャンダル。こんなチャンスはない、と先輩だったら嬉々として乗るだろうし、編集長だって気持ち悪いくらいの笑顔を見せるだろう。

そのくらい、この男には価値がある。その価値を、己の価値を、この男は十二分に理解している。


掴まれたままの右腕が、じくじくと焼け焦げる気がした。
逃げられない。この勝負から、わたしは、逃げることが出来ない。そんなことをしようものなら、間違いなく、わたしは殺される。