──思考は戻って、現在。

冒頭のセリフを落とされた現状を、どうしてそうなったのか、必死に過去を振り返って考えたが、どこからやり直したら今を変えられるのか、全く検討がつかなかった。


返事をよこさないわたしを不服そうに彼は見下ろしている。口を噤んだままでは、現状は変えられないらしい。

その事実にようやく頭が追いついて、絞り出すように「なんで、」と零せば、彼はあっけらかんと答える。



「なんでって…それは…椎名さんが、」

「……、」

「…椎名さん───椎名すみれが、暴いてよ。僕の秘密を暴くのは、きみだ」

「っ、!?」



つーっと、彼の長い指先がわたしの輪郭をなぞった。
刺激に思わず身体を震わせれば、一瞬、彼は悲しそうに瞳を揺らしたが、それは本当に瞬きよりも短い一瞬だったから、記憶に残らず風のように消えていく。



「勝負は簡単。きみが、僕の目的を暴くことが出来るか否か」

「…目的、」

「そう。僕が今日きみに正体を明かした理由、勝負をもちかけた理由、全ての目的をきみが暴けるかどうか」