「おはよう兄さん」
「恵、おはよう」
「うん。今日は私が頑張って朝ごはんつくちゃったよ〜」
「おお、マジか」
「兄さんが好きなスクランブルエッグもあるよ」
「やったね」
春とはいえ、朝は少し肌寒い。それでも、窓を開けていると澄んだ風が部屋に吹き込んで、春を感ぜさせる、その時間が好きで僕は毎朝家の窓を開けていた。
「もう、寒いってのに。そんなにぼうっとしてたら学校遅れちゃうよ? 入ったばっかりってのに」
「はいはい、いただきます」
「召し上がれ」
恵が作った朝ごはんを口に運びつつ、今日のニュースを流し見する。
「新高校生になるわけだけど、どうだった? 友達できた?」
「昨日は会話する機会もなく終わっちゃったからなあ。まあ中高一貫だし、知り合いも多かったよ」
「ええ、そんなこと言って、本当は中学の頃に友達なんかいなかったんじゃないの?」
「流石にいるって」
菊田さんと話した後、僕は残っていた知り合いと少し話してから帰った。友達は普通にいる。
「じゃあ新しい友達はできた?」
「う〜ん……」
菊田さんのことを、友達と言っていいのかは曖昧なところがある。昨日だって隣の席だからということで話しただけだし、友達だって言ったら嫌がられるかもしれない。
「その様子じゃあできてないね?」
あからさまに口元をにやつかせ、私はもう十人はできたよ、と自慢してくる恵。
恵は社交的だからなあ。
「兄さんのことだし、ちゃっかり女の子の友達も作ってそうな感じもするけど」
「ええ、そう見える?」
「うん。見た目女の子ぽいし」
「……気にしてるって言っただろ」
恵の言葉で少しムッとしてしまう。でも、恵の言うことが間違っているわけではなく。
僕は男らしくない。目は大きいし、一人称は僕だし、身長もそこまで大きくなくて、筋肉もない。
事実なのだ。残念ながら。
「とりあえず一人称を変えてみたら?」
「俺とかってこと?」
「他に何があるの? はい、プレーンヨーグルト」
「ありがと」
妹からうちにあるには珍しい、ヨーグルトが差し出された。しかも珍しい中でももっと珍しい、プレーンのヨーグルト。
「昨日スーパーで格安で売ってたって母さんが言ってた。一つしかないけど、兄さんっぽいからあげるよ」
「……昨日もそんなこと言われたよ」
「ええっ、すごいね、シンパシー感じるね」
「全然似てないけどね」
「ええ、どんな人?」
「もっとお淑やかな人」
「……もしかして女の人!?」
「……まあ、そうだけど」
「兄さんにも春が来たー!」
ドタバタと、寝ている両親を起こしに二階へ上がる恵。
あんなことをしている恵の方がよっぽど学校に遅れそうだと呆れ、俺はほんのりとした酸味があるヨーグルトを口に運んだ。
「恵、おはよう」
「うん。今日は私が頑張って朝ごはんつくちゃったよ〜」
「おお、マジか」
「兄さんが好きなスクランブルエッグもあるよ」
「やったね」
春とはいえ、朝は少し肌寒い。それでも、窓を開けていると澄んだ風が部屋に吹き込んで、春を感ぜさせる、その時間が好きで僕は毎朝家の窓を開けていた。
「もう、寒いってのに。そんなにぼうっとしてたら学校遅れちゃうよ? 入ったばっかりってのに」
「はいはい、いただきます」
「召し上がれ」
恵が作った朝ごはんを口に運びつつ、今日のニュースを流し見する。
「新高校生になるわけだけど、どうだった? 友達できた?」
「昨日は会話する機会もなく終わっちゃったからなあ。まあ中高一貫だし、知り合いも多かったよ」
「ええ、そんなこと言って、本当は中学の頃に友達なんかいなかったんじゃないの?」
「流石にいるって」
菊田さんと話した後、僕は残っていた知り合いと少し話してから帰った。友達は普通にいる。
「じゃあ新しい友達はできた?」
「う〜ん……」
菊田さんのことを、友達と言っていいのかは曖昧なところがある。昨日だって隣の席だからということで話しただけだし、友達だって言ったら嫌がられるかもしれない。
「その様子じゃあできてないね?」
あからさまに口元をにやつかせ、私はもう十人はできたよ、と自慢してくる恵。
恵は社交的だからなあ。
「兄さんのことだし、ちゃっかり女の子の友達も作ってそうな感じもするけど」
「ええ、そう見える?」
「うん。見た目女の子ぽいし」
「……気にしてるって言っただろ」
恵の言葉で少しムッとしてしまう。でも、恵の言うことが間違っているわけではなく。
僕は男らしくない。目は大きいし、一人称は僕だし、身長もそこまで大きくなくて、筋肉もない。
事実なのだ。残念ながら。
「とりあえず一人称を変えてみたら?」
「俺とかってこと?」
「他に何があるの? はい、プレーンヨーグルト」
「ありがと」
妹からうちにあるには珍しい、ヨーグルトが差し出された。しかも珍しい中でももっと珍しい、プレーンのヨーグルト。
「昨日スーパーで格安で売ってたって母さんが言ってた。一つしかないけど、兄さんっぽいからあげるよ」
「……昨日もそんなこと言われたよ」
「ええっ、すごいね、シンパシー感じるね」
「全然似てないけどね」
「ええ、どんな人?」
「もっとお淑やかな人」
「……もしかして女の人!?」
「……まあ、そうだけど」
「兄さんにも春が来たー!」
ドタバタと、寝ている両親を起こしに二階へ上がる恵。
あんなことをしている恵の方がよっぽど学校に遅れそうだと呆れ、俺はほんのりとした酸味があるヨーグルトを口に運んだ。
