恋がしたい。
そう思い始めたのは、いつ頃だったか。
別に、好きな人が、今までに一回も出来たことがないわけではないのだ。更に言えば、私は割と好きな人は、すぐに作ることができる部類の人間だ。
そうなると、一文目が嘘だったのかと責められるかもしれないが、私がしたいのは、「本物の恋」なのだ。
狭い水槽の中で、番を見つけるようなちっぽけな恋ではない。お互いがお互いに恋焦がれ、痺れる。
私は、そんな恋に恋している。

私、林田茉里は、周りから見れば、ドン引きレベルで恋に焦がれている。当然 肩書きは、彼氏いない歴=年齢で、ついたあだ名は、恋煩い。
しかし、誰だって彼氏・彼女は欲しいものだろう。リア充を見れば、羨ましい通り越してスタンガン取り出したくなるし、美男美女とすれ違えば、自分と比べて、余計に焦ってしまうし、少女漫画を読めば…

「ーー茉里!!」
「うわっ!」
大声に驚いて、顔を上げると、そこには友達のえみりが立っていた。
「どうしたの?ずっと呼んでたんだよ?茉里のこと。
また得意の妄想?」
「ごめん、ごめん。つい いつもの癖でさ。」
「まじで高校では、それバレないようにしなよ?
…でも、茉里のその変な癖を注意できるのも、
今日で最後かと思うと、なんか怒れないなー。」

そうなのだ。今日は、中学の卒業式。
今は式典が終わり、卒業生は、中々帰路につかず、名残惜しげに学校に居座り続け、写真を撮ったり、談笑したりしている。私自身は、中学に思い出は少なく、あまり寂しいという感情はないのだけれど。

死んだ魚の目をして、涙ぐむ同級生たちを眺めていた私は、この時、高校であんな青春時代をおくることになるとは夢にも思っていなかった。