そこへ、玄関のドアをバーンッと開けて、誰かがドカドカと部屋に入って来ました。
銀色の髪の釣り目の、背の低い青年です。青く長いカーディガンと真っ白なパンツを身に着けています。
先生がとっさに生徒たちを背中にかばいました。
青年は手に白いナイフを持っています。いや、そのナイフは、
この空間を飛んでいるWi-Fiで、今、その場で作られたものでした。
「お前たち、Wi-Fiを加工しているな! その技術を俺に寄越すんだ!」
青年は甲高い声でそう言います。先生の眉間に深い皺が寄りました。
「そう言うきみもWi-Fiを加工する技術を持っているようだけど」
先生の声はいつも低くてやわらかいのですが、
今はとても硬く冷たく、子どもたちはそんな先生の声を聴いたことがありませんでした。
「お前、Wi-Fiの加工技術を大学で共同開発したあと、その技術を独占して雲隠れしただろう!
その技術をすべて自分の利益にするために!」
「そうなの? 先生」
少年と少女が不安そうにそう先生に聞きます。おちびさんは、先生のベージュのズボンの脚にしがみついています。
「きみのように、Wi-Fi可視化・加工化技術を悪用して、
ひとを脅したり、殺したりしようとするやつが必ず出て来ると、私は思っていたよ」
先生はあくまで冷静にそう言います。青年がナイフをきらめかせます。
「Wi-Fiを固く加工すれば、人間の肉などすぐに貫ける。首を絞めることだって出来る。
今の時代、Wi-Fiなんてどこででも飛んでいるからね。
相手に見えないように殺すことだって可能だ」
「その通り。人間たちは常に凶器の中で暮らしているんだ。
それにいちはやく気づいたのが先生、あんただろう」
先生と青年の会話に、子どもたちは震え上がりました。自分たちが楽しく加工していたものが、
実はそんなに危ないものだったなんて。
「大丈夫、みんな。Wi-Fiは正しく使えばとても安全なものだからね」
子どもたちを振り返って先生がほほ笑みます。そのほほ笑みはいつもの先生のもので、
子どもたちはほっとしました。
「あんたを殺してこの部屋を家捜ししたって良いんだ」
「駄目だ、先生は殺させない!」
青年の言葉に少年が声を上げます。青年の口がひくりとゆがみ、
突き出されたナイフが先生の頬にすうっと触れました。
「先生!」
「問題ないよ、きみたち」
先生がまた振り返って微笑みます。
そして、
次の瞬間、
青年は白いWi-Fiで全身をぐるぐる巻きにされ、
ミイラのようになって、床に転がっていました。
「現代にはね、
Wi-Fi加工に寄る犯罪を取り締まる法律がないんだ」
銀色の髪の釣り目の、背の低い青年です。青く長いカーディガンと真っ白なパンツを身に着けています。
先生がとっさに生徒たちを背中にかばいました。
青年は手に白いナイフを持っています。いや、そのナイフは、
この空間を飛んでいるWi-Fiで、今、その場で作られたものでした。
「お前たち、Wi-Fiを加工しているな! その技術を俺に寄越すんだ!」
青年は甲高い声でそう言います。先生の眉間に深い皺が寄りました。
「そう言うきみもWi-Fiを加工する技術を持っているようだけど」
先生の声はいつも低くてやわらかいのですが、
今はとても硬く冷たく、子どもたちはそんな先生の声を聴いたことがありませんでした。
「お前、Wi-Fiの加工技術を大学で共同開発したあと、その技術を独占して雲隠れしただろう!
その技術をすべて自分の利益にするために!」
「そうなの? 先生」
少年と少女が不安そうにそう先生に聞きます。おちびさんは、先生のベージュのズボンの脚にしがみついています。
「きみのように、Wi-Fi可視化・加工化技術を悪用して、
ひとを脅したり、殺したりしようとするやつが必ず出て来ると、私は思っていたよ」
先生はあくまで冷静にそう言います。青年がナイフをきらめかせます。
「Wi-Fiを固く加工すれば、人間の肉などすぐに貫ける。首を絞めることだって出来る。
今の時代、Wi-Fiなんてどこででも飛んでいるからね。
相手に見えないように殺すことだって可能だ」
「その通り。人間たちは常に凶器の中で暮らしているんだ。
それにいちはやく気づいたのが先生、あんただろう」
先生と青年の会話に、子どもたちは震え上がりました。自分たちが楽しく加工していたものが、
実はそんなに危ないものだったなんて。
「大丈夫、みんな。Wi-Fiは正しく使えばとても安全なものだからね」
子どもたちを振り返って先生がほほ笑みます。そのほほ笑みはいつもの先生のもので、
子どもたちはほっとしました。
「あんたを殺してこの部屋を家捜ししたって良いんだ」
「駄目だ、先生は殺させない!」
青年の言葉に少年が声を上げます。青年の口がひくりとゆがみ、
突き出されたナイフが先生の頬にすうっと触れました。
「先生!」
「問題ないよ、きみたち」
先生がまた振り返って微笑みます。
そして、
次の瞬間、
青年は白いWi-Fiで全身をぐるぐる巻きにされ、
ミイラのようになって、床に転がっていました。
「現代にはね、
Wi-Fi加工に寄る犯罪を取り締まる法律がないんだ」



