※ep:31 未来で見た死と最終話を読んでから読んで頂くと、より分かりやすいです。
最近、身体の調子が悪い。
寝ても寝ても一日中ずっと眠いのだ。
騎士団は魔獣討伐の最中に魔獣の勢いに押されて一時退却をした反省を活かして、より強い騎士団を目指し訓練が厳しくなった。
私は結局、レオンの反対を押し切ってまだ騎士団に所属している。
これからは義姉として、アグネスやノアを物理的にこの腕っぷしで守ってやりたいと思ったのだ。
そのため生傷が絶えない毎日で、訓練が終わると倒れ込むようにベットにダイブする日々だ。
これが中年の親父どもが言う「疲れが取れない」というやつなのか?
私もまだまだ若いと思っていたのに。
あの魔獣討伐後にレオンは騎士団を退団した。
周りの要請もあり、退団後すぐに文官登用の試験を受け、いまは宰相室で文官のひとりとして王城に勤めている。常に冷静で優秀なレオンは、未来の宰相だと期待値も高い。
もともとレオンが騎士団にいたのは聖女アグネスの聖騎士となるためだったが、あれからアグネスは大聖堂に戻ることもなく軟禁生活に終止符を打ち、また聖女の在り方が見直されることになったため、聖騎士が必要なくなったのもある。
陛下と王妃は悪事の数々が露呈しあっさりと失脚。王族派も道連れとなった。
いまレオンは新陛下となったノアを支えるために日々忙しくしている。
もともと学園でも優秀だったレオンは先輩方々から「ようやく本来の道に戻ってきたか」と言われるぐらいだから心配することはないが、婚約者の私としては騎士団でレオンに会えないのは淋しい。
「セレーネ、最近食欲がなさそうよね。ラチェット侯爵が退団されてしまったから寂しいのかしら?」
セレーネと昼食を一緒に食べていた同僚の女騎士に冷やかされながら最近の体調不良を心配される。
「寂しくはないぞ」と強がって見せたが、気の置けない仲間に優しく声を掛けられるとついつい気持ちが緩む。
「ここ最近寝ても寝ても疲れが取れない上に、胃の調子が悪くてずっとムカムカしているんだよ」
同僚の女騎士に身体の不調を訴える。
「どう胃の調子が悪いの?食べてもすぐに気持ち悪くなって吐いてしまうとか?」
「そうなんだよ」
よく気づいてくれたと言わんばかりにセレーネは縋る思いで何度も頷き同意した。
「お茶は飲める?」
「最近、お茶を美味しく思えなくなってしまったのだ。いまは果実水ばかりだ」
同僚の女騎士は果実水という言葉に反応した。
「ねぇ、セレーネ。果実水でも柑橘系とか…そのレモン水なら飲めるのかしら?」
「どうしてわかるんだ?」
横で目を丸くしているセレーネに同僚の女騎士は思わず苦笑いしてしまう。
「匂いにも敏感になっていない?本当にあなたって、いつも周りのことを優先させるから自分自身のことに疎いわよね」
同僚の女騎士は辺りを見まわして、周囲に人がいないことを確認するとセレーネに耳打ちをした。
「——まさかっ」
「でも、心当たりはあるんじゃない?全く、あのお忙しいラチェット侯爵にいつそんな時間があったのかしらね?」
セレーネは自分の腹に手を当てた。
——あの時の子だ。
——私がレオンの子を妊娠した——
死に戻ったレオンを探しに大聖堂に行き、アグネスの姿をしたレオンを見つけたあの日。
違法な薬草の取引の証拠をふたりで探しラチェット家に帰ったあの夜、レオンに激しく抱かれた。
死に戻ったレオンが女神さまと約束した1週間という時間が経てば消えてしまうのではないかと不安で沈みゆく気持ちの中から、何度も何度もレオンの逞しい腕に引き上げられた。
そしてレオンはセレーネが魔獣討伐に行き命を落とす未来から守ろうとし、命が未来につながるように願っていた。
「——生みたい…わた…し、レオンとの子を絶対に生みたい——」
何度も何度もそう呟いて泣き崩れるセレーネの傍で、同僚の女騎士は普段は弱さなど見せたことがないセレーネが人目もはばからずに泣き崩れる様子に驚く。
そして、レオンとセレーネにしかわからない辛いことがあったのだろうと察する。
同僚の女騎士はセレーネの言葉ひとつひとつに頷きながら涙を浮かべ、優しく背中をさすり続けた。
最近、身体の調子が悪い。
寝ても寝ても一日中ずっと眠いのだ。
騎士団は魔獣討伐の最中に魔獣の勢いに押されて一時退却をした反省を活かして、より強い騎士団を目指し訓練が厳しくなった。
私は結局、レオンの反対を押し切ってまだ騎士団に所属している。
これからは義姉として、アグネスやノアを物理的にこの腕っぷしで守ってやりたいと思ったのだ。
そのため生傷が絶えない毎日で、訓練が終わると倒れ込むようにベットにダイブする日々だ。
これが中年の親父どもが言う「疲れが取れない」というやつなのか?
私もまだまだ若いと思っていたのに。
あの魔獣討伐後にレオンは騎士団を退団した。
周りの要請もあり、退団後すぐに文官登用の試験を受け、いまは宰相室で文官のひとりとして王城に勤めている。常に冷静で優秀なレオンは、未来の宰相だと期待値も高い。
もともとレオンが騎士団にいたのは聖女アグネスの聖騎士となるためだったが、あれからアグネスは大聖堂に戻ることもなく軟禁生活に終止符を打ち、また聖女の在り方が見直されることになったため、聖騎士が必要なくなったのもある。
陛下と王妃は悪事の数々が露呈しあっさりと失脚。王族派も道連れとなった。
いまレオンは新陛下となったノアを支えるために日々忙しくしている。
もともと学園でも優秀だったレオンは先輩方々から「ようやく本来の道に戻ってきたか」と言われるぐらいだから心配することはないが、婚約者の私としては騎士団でレオンに会えないのは淋しい。
「セレーネ、最近食欲がなさそうよね。ラチェット侯爵が退団されてしまったから寂しいのかしら?」
セレーネと昼食を一緒に食べていた同僚の女騎士に冷やかされながら最近の体調不良を心配される。
「寂しくはないぞ」と強がって見せたが、気の置けない仲間に優しく声を掛けられるとついつい気持ちが緩む。
「ここ最近寝ても寝ても疲れが取れない上に、胃の調子が悪くてずっとムカムカしているんだよ」
同僚の女騎士に身体の不調を訴える。
「どう胃の調子が悪いの?食べてもすぐに気持ち悪くなって吐いてしまうとか?」
「そうなんだよ」
よく気づいてくれたと言わんばかりにセレーネは縋る思いで何度も頷き同意した。
「お茶は飲める?」
「最近、お茶を美味しく思えなくなってしまったのだ。いまは果実水ばかりだ」
同僚の女騎士は果実水という言葉に反応した。
「ねぇ、セレーネ。果実水でも柑橘系とか…そのレモン水なら飲めるのかしら?」
「どうしてわかるんだ?」
横で目を丸くしているセレーネに同僚の女騎士は思わず苦笑いしてしまう。
「匂いにも敏感になっていない?本当にあなたって、いつも周りのことを優先させるから自分自身のことに疎いわよね」
同僚の女騎士は辺りを見まわして、周囲に人がいないことを確認するとセレーネに耳打ちをした。
「——まさかっ」
「でも、心当たりはあるんじゃない?全く、あのお忙しいラチェット侯爵にいつそんな時間があったのかしらね?」
セレーネは自分の腹に手を当てた。
——あの時の子だ。
——私がレオンの子を妊娠した——
死に戻ったレオンを探しに大聖堂に行き、アグネスの姿をしたレオンを見つけたあの日。
違法な薬草の取引の証拠をふたりで探しラチェット家に帰ったあの夜、レオンに激しく抱かれた。
死に戻ったレオンが女神さまと約束した1週間という時間が経てば消えてしまうのではないかと不安で沈みゆく気持ちの中から、何度も何度もレオンの逞しい腕に引き上げられた。
そしてレオンはセレーネが魔獣討伐に行き命を落とす未来から守ろうとし、命が未来につながるように願っていた。
「——生みたい…わた…し、レオンとの子を絶対に生みたい——」
何度も何度もそう呟いて泣き崩れるセレーネの傍で、同僚の女騎士は普段は弱さなど見せたことがないセレーネが人目もはばからずに泣き崩れる様子に驚く。
そして、レオンとセレーネにしかわからない辛いことがあったのだろうと察する。
同僚の女騎士はセレーネの言葉ひとつひとつに頷きながら涙を浮かべ、優しく背中をさすり続けた。
