自爆しないで旦那様!



***

さて、大学に到着し、それぞれ講義があるのでエミリオと別れたリーシャだったが。

「リーシャ、隣に座っても構いませんか?」

「エミリオ……!?」

大学の図書室にて、再びエミリオと合流。

いつもこの曜日は昼休み前に空き時間があるので、リーシャはレポート課題をやろうと図書室にいた。

「びっくりした……。隣ならどうぞ。貴方もこの時間は空いてるの?」

「はい。普段は空き教室で自習しています。今日は課題に使う本を借りに来たんです。貴女の姿が見えたので、声を掛けてしまいました」

空いてる隣の席にエミリオが腰掛け、抱えていた本を机に置く。

「リーシャのそれも、課題ですか?」

エミリオがリーシャの開いている本を見た。

「そう。口承叙事詩と魔術っていうテーマでレポートを書かなきゃいけなくて……今は色々と文献を読んで自分なりの解釈を書き出してるところ」

まだ全然まとまっていない。

リーシャは小さく溜息をついた。

「そうですか。僕に手伝えることは何かありますか?」

「大丈夫だよ。このくらい、一人でやらないと。エミリオだって課題あるんでしょ?」

「はい。ですが、僕は口語魔術学科を卒業しているので、言わば貴女の先輩です。行き詰まってしまったらアドバイスくらいできます。その時は僕を頼ってください」

「わかった。ありがとう」

それからは、二人で静かに課題に取り組んだ。

図書室のゆったりとした空間は居心地がいい。

それなのに、なぜだかリーシャは落ち着かなかった。

(エミリオが、気になる……!)

課題どころではない。

隣に座るエミリオがパラリと本のページをめくる度、その小さな音に意識をもっていかれる。


――僕も……貴女といる時間は、好きです


あの時の、美しいバイオレットの瞳と頬へのキス。

それらを思い出し、リーシャは顔を熱くした。

(ストップ!なんで今思い出すの!?余計集中できなくなる……!)

エミリオはいつだって冷静だ。

思い出して真っ赤になるのは自分だけなのだろうか。

リーシャはチラリとエミリオを盗み見た。