自爆しないで旦那様!


鳥籠のような物体が何もない空間から突然現れる。

ガシャン!という音がしたかと思うと、ラズは小さな檻の中に閉じ込められていた。

「げっ!なんだこれ!」

檻の中のエリマキトカゲが慌てていると。

「ラズ?貴方、何してるの?」

「助けてリッちゃん!俺めっちゃピンチ!エミリオくんにやられた!」

「エミリオが……?」

お弁当を持って玄関に来たリーシャが、ラズとエミリオを交互に見る。

ガタガタと檻の格子を揺らしながら飼い主に救援を求めるエリマキトカゲだったが、エミリオに黒い笑顔でこう言われてしまった。

「ラズ、大学が終わってリーシャとここに戻ってきた時、檻から出してあげます。それまではそこで大人しくしていてください」

「ちょ、マジかよ!」

「行きましょう、リーシャ。構っていたら遅刻しますよ」

エミリオは支度を終えたリーシャと手を繋ぎ、外へと歩き出す。

「リーシャのことは僕が守ります」

ラズに聞こえたかはわからないが、エミリオは誓うようにそう呟いた。

「ラズ、大丈夫かな?」

歩きながらラズを心配するリーシャ。

エミリオは素っ気なく返事をする。

「一日くらい檻の中でも簡単にはくたばりませんよ。退屈で死にかけるかもしれませんが」

「確かに。ラズは退屈が嫌いかも。ちょこちょこ動いてる方が好きみたいだし……。エミリオは?毎日迎えに来てくれるけど、面倒だとか思わない……?」

「思いません」

「本当?大学行くのに遠回りでしょ?」

「ここへは朝の散歩だと思って来ています」

エミリオの家は大学を出て東側にあるらしい。

リーシャの家とは反対方向になる。

それを知っているからこそ、心苦しくなるリーシャだった。

「僕のことで貴女が気にすることは何もありませんよ。僕がしたくてしていることです」

しゅんとしたリーシャを気遣い言葉を掛ける。

けれども、エミリオのそれはリーシャに冷たく聞こえた。

「気にするよ。エミリオに無理させてないかな、とか」

「そうですか。なら僕は言い方を間違えたようですね。……僕が、少しでも多くの時を貴女と一緒に過ごしたいんです。これなら、伝わりますか?」

繋いだ手からエミリオの熱を感じる。

リーシャはドキドキして少し視線をそらしながら答えた。

「うん……。私も、エミリオが来てくれるの、嬉しい」

照れが含まれたリーシャの声に、エミリオが柔らかく微笑む。

「やはり、ラズがいない方がいいですね。貴女と落ち着いて話ができます」

「えっ、まさか、そのためにラズを……?」

「はい。いると邪魔ばかりしてきますので」

とてもステキな笑顔でエミリオは頷いたのだった。