***
最近のリーシャの一日はエミリオから始まる。
「おはようございます、迎えに来ました」
エミリオは毎日、リーシャが朝食を終えるタイミングで家にやって来るのだった。
「おはよう、エミリオ。ちょっと待ってて」
玄関にいるエミリオに呼びかけ、リーシャはキッチンへ。
オーチェからお弁当をもらうのだ。
その間に玄関では、エリマキトカゲのラズが置いてあるリーシャの鞄の中にそそっと入ろうとしていた。
「ラズ」
それを見逃さず、エミリオが声を掛ける。
「ん?おはよーエミリオくん。なんか怖い顔してるけど?どした?俺なんかした?」
上から睨んでくるエミリオに冷や汗をかくラズ。
次の瞬間、エミリオはエリマキトカゲを掴み、キュッと握り締めた。
ラズがグエッと悲鳴を上げる。
「貴方はいつもいつも、そうやってリーシャにくっついて……正直、不愉快です」
「わお、エミリオくんが嫉妬!最高に笑えるね」
「貴方はなぜ彼女と一緒にいるんですか」
「そりゃあ、リッちゃんのことが好きだから?」
サラッと言われ、エミリオは少しだけ沈黙した。
「……なるほど。これが嫉妬という感情ですか。ラズのおかげでこのドス黒い心の正体がわかりました。なので、原因となる貴方には消えてもらいます」
エミリオの「消す」発言に、ラズの目が妖しくギラッと光る。
「へぇー、俺を殺る気?」
「違います。僕としては殺しても構いませんが、突然ペットが消えたらリーシャが悲しむでしょう。なので……」
エミリオが小声で何か唱え始める。
ラズが魔術の気配を察知した時にはもう遅かった。
「ペットはペットらしく、檻に入っていてください」


