***
さて、いつも通り大学へ行き、講義が終わって昼休みになった頃。
お弁当仲間が集まる中庭へリーシャが向かっていた時である。
「なっ!?あんた!どうして!?」
高い声が聞こえたかと思うと、突然ヘレナが現れた。
どうして生きているのか。
彼女はそう言いたげな表情でリーシャに勢いよく迫ってくる。
「なんなの!?なんでピンピンしてるの!?ちゃんとやったのに!」
やはり昨日のことは彼女が原因か。
リーシャは怒りを覚えた。
「何を、やったのかしら?」
「えっ……」
リーシャの低い怒りの声に、ヘレナが怯む。
「ねえ、ヘレナ・メルヴェスさん?貴女、私に何をしたの?」
「っ……あ、あんたを殺すために、呪いをかけたのよ!呪いは完璧だった!私のパパが、失敗なんてするはずないんだから!」
確かに完璧だっただろう。
(そのせいで、エミリオが自爆することになったなんて、本当に腹が立つ……!)
仕掛けてきた彼女にも、エミリオに頼るしかなかった無力な自分自身にも、リーシャは怒っていた。
「なのに、なんであんたは生きてるの!?どうやって呪いから逃れたのよ!?」
「あの呪いは僕が解きました」
コツ、と靴音がして、エミリオがヘレナの背後からやって来る。
リーシャを睨んでいた彼女は振り返ってエミリオを見た。
「エミリオくん……!エミリオくんが呪いを解いたの!?嘘でしょ!?だってあの呪いは……!」
「死ぬ以外に解く方法なんてない。そう言いたいのですか?」
落ち着いた声で問われ、ヘレナも少しだけ冷静になる。
「……そうよ。絶対に解けないはず。呪いを解いた人なんて見たことないわ!」
「僕は貴女いわく“優秀”ですから。解けてしまったんです。なので再びリーシャに呪いをかけようとしても無駄ですよ。残念でしたね」
「どうやったの?どうやって解いたの!?」
「さてね。教える必要、ありますか?」
「っ……!」
悔しげにギリリと歯を食いしばるヘレナ。
エミリオは厳しい眼差しで彼女を見下ろした。


