自爆しないで旦那様!


話しながらリーシャは勉強机に向かった。

学生なのだから色々と忙しいのだ。

いちいちラズのお遊びに付き合ってはいられない。

動物会話以外にも、やらなければいけない課題がある。

リーシャは本棚から分厚い叙事詩の本を取り出した。

「えっと……どこまで覚えたっけ」

魔術の叙事詩の丸暗記。

これも口語魔術学科の生徒として、避けては通れない道だ。

単純に覚えればいいだけの課題だが、量が凄まじいので地味にキツイ。

毎年、口語魔術学科の生徒はこれにヒーヒー言っているとかいないとか。

「なあ、にゃんことの会話どうなったよ。できたのか?」

ラズがピョンと机に飛び乗ってきた。

「できてないよ。だから明日、できる人に教えてもらうことになった」

「へー。誰?」

「同じ学部の、エミリオっていう男の子」

「っ!?」

あからさまに驚いた様子でラズが固まる。

そしてこの口の達者なエリマキトカゲは何か考えるように首を捻ってみせた。

「ふーん、へー。エミリオくんねぇ……」

ちょこちょこと机の上を歩き回りながらラズが疑問を口にする。

「接点あったっけ?リッちゃんから近づいたの?それとも、エミリオくんから?」

「友達のマリーちゃんが紹介してくれたの」

「おっと、まさかのマリーちゃんかよ!あのおバカ娘、何考えてんだか……いや、何も考えてないのか」

ボソボソと何か言っているが本に集中し始めたリーシャには届いていなかった。

「まあ、いいや。気をつけなよ?それだけは言っとく」

ハッキリした声で忠告され、本からラズへと視線を移す。

何に気をつけろというのだろうか。

ラズの言いたいことがよくわからないリーシャだった。