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どれくらい経ったのだろう。
まだエミリオは戻らない。
その間、オーチェとラズはずっとリーシャのそばにいて、無言になる彼女を気に掛けた。
二人はエミリオではなくリーシャの心配をしているようだ。
そんな時、不意に足音が聞こえた。
「……ただいま、戻りました」
「エミリオ!!」
暗闇の奥からエミリオの姿が現れて、リーシャはいち早く駆け寄った。
「大丈夫!?呪いは!?ちゃんと消えた!?」
「はい。普通の肌、でしょう?」
エミリオの顔や手から、あの黒が消えている。
リーシャは心底ホッとした。
ホッとしたら、涙があふれた。
「っ……うぅ……エミリオ、よかっ……た!」
ボロボロと涙をこぼすリーシャ。
そんな彼女を見てエミリオは目を丸くしてから、どんな顔をすればいいのかわからなくなった。
(この感情は、何でしょうか……。泣いてるリーシャを見て心が痛むはずなのに、嬉しいと思う自分もいるなんて……。僕はどんな表情をすればこの気持ちを彼女にちゃんと伝えられるのか……正解がわかりません)
「リーシャ……」
まだ決まらない曖昧な表情で、エミリオがそっとリーシャの名前を呼ぶ。
「あーあ。リッちゃん泣かせた―」
「何度でも蘇るんだよね?僕も一度殺してみたいな、君のこと」
ラズとオーチェがひやかすように割り込んできた。
邪魔されたエミリオはカチンときて声を荒らげる。
「お断りです!」
「ねえ、エミリオくん。情報通な俺にとっても自爆型の詳細って謎なんだけどさ。バラバラになった服も都合よく再生されるわけ?」
「はい。僕が身につけているものはもとに戻ります」
「ハハッ、リーシャからもらった呪いまで再生されなくて良かったね」
「じゃあ、あれか?俺がエミリオくんの手を握ってたら、エミリオくんが自爆したとき俺も再生される感じ?」
「命に関しては別です。僕自身ではない命は再生されません。されたとしても体だけでしょう。その場合、貴方はラズの形をした抜け殻となります」
「なるほどね。綺麗な死体の出来上がりってわけか」
うるさい二人と喋りつつ、エミリオはすすり泣くリーシャの震える肩を抱きしめた。
安心させるようにぽんぽんと背中を叩く。
やがて泣き止んで落ち着いたリーシャは、家に戻ると疲れたのかすぐに眠ってしまった。
エミリオ達は念のため、一晩中警戒モードに。
しかしそれからは静かなもので、何事もなく夜明けを迎えたのだった。


