自爆しないで旦那様!



***

 それから、リーシャの呪いを全て身に受けたエミリオは公園に行くと言い出した。

誰もいないそこで自爆をするらしい。

呪いをエミリオに移して体調が良くなったリーシャは、彼に付き添って公園まで歩いていった。

「ここまでで、いいです。後は、僕だけで……。貴女は先に、家へ戻ってください」

すっかり日が暮れて真っ暗な公園の奥へと、エミリオが一人で行ってしまう。

自爆するところをリーシャに見せたくない、という強い気持ちが、呪いで痛む彼の足を動かした。

「エミリオ……」

公園の入り口に佇み、遠ざかるエミリオの背中を見つめるリーシャ。

エミリオが心配で堪らない。

先に戻れと言われても、そばにいたい。

リーシャがその場所から動けずにいると、遅れてオーチェとラズがやって来た。

二人は留守番のはずだったが、やはり心配なのだろう。

「リーシャ。本当にもう、体は平気?どこも痛くない?」

近寄ってきたオーチェが顔色の悪いリーシャに問い掛ける。

「うん……私は大丈夫」

「スゴいよなぁ、エミリオくんは。魔術による同調ってわりと簡単だけどさ、呪いだけ移動させるって難しくない?俺は無理。そんな神経めっちゃ使いそうな魔術できない」

青年姿のラズがリーシャのすぐ隣に立った。

ラズとリーシャの距離が気に食わないのか、オーチェが嫌みをこめて言葉を投げる。

「エミリオはそういうの得意だからね。君と違って」

「はいはい。俺と違ってね。オーチェくんはできるの?」

「できないよ。僕にできることは、リーシャを呪った相手に地獄を見せてあげることくらいさ」

「わーお。マジでオーチェくんは敵に回したくないわ……」

もうエミリオの姿は闇に溶けて見えなくなった。

リーシャがポツリと呟く。

「エミリオ……大丈夫かな?」

「大丈夫っしょ。軽めの自爆って言ってたし」

「けどさ、わざわざ自爆しなくても、呪いをもらったら時間が経てば死ぬんじゃない?呪いに身を任せようとか思わないわけ?」

「オーチェくん、呪いだよ?スゲー苦しくて、死ぬ直前はのたうち回るって聞いたよ俺は」

「ふーん。まあ確かに、それを喜んで味わう趣味はエミリオにはないか」

その時だった。

何かが爆発するような音がエミリオが消えた方向から聞こえた。

その音は絶対に、人間の体から自然に出る音じゃない。

リーシャは血の気が引いた。

「あー、やったな」

「そうだね。後は待つしかない。再生を」

何度も聞いたことがあるのか、リーシャ以外の二人は落ち着いている。

(絶対、助かるっ……エミリオは必ず、私の前に戻ってくる……!)

エミリオの言葉を信じているはずなのに、リーシャは祈るような気持ちで時を過ごした。