自爆しないで旦那様!


「ひっ……きゃああああっ!!!!」

自分に絡みつく気持ち悪いそれらを目にし、リーシャが狂ったように悲鳴を上げる。

「リッちゃん!!どうした!?落ち着け!!」

すぐそばにいたラズには悪霊が見えなかった。

しかしリーシャの異変に危機感を察知する。

彼は人間の姿に戻りリーシャをきつく抱き締めた。

「リーシャ!?どうしたの!?」

バンッ!と勢いよく扉を開けて一階にいたオーチェが駆け込んでくる。

ラズはリーシャを抱き締めたまま叫んだ。

「オーチェくん!エミリオくん呼んでこい!!早く!!」


それから直ぐ様エミリオの後を追いかけたオーチェが彼を連れて戻ってきた。

慌てて引き返したエミリオが到着した時にはリーシャは少しだけ落ち着きを取り戻していたが、ラズの腕の中でグッタリした状態だった。

「リーシャ!無事ですか!?」

エミリオがリーシャに近づく。

目を閉じていたリーシャは恐る恐る瞼を上げた。

もう視界に悪霊は映らない。

目の前にあるのは、心配そうにこちらを見るエミリオの顔だけだ。

「エ、ミリ、オ……なんか、気持ち悪い顔が、いっぱい……あれは、悪霊なの……?」

「何も見えませんが……どこにいますか?」

「もう、見えない。でも、すごく寒くて……体中の骨が、軋んでる、みたいに……痛い……っ」

エミリオはリーシャの手にそっと触れた。

冷えきった死人のそれである。

「ラズ、彼女をベッドに」

「わかった」

エミリオの指示に従い、ラズがリーシャを優しくベッドに横たわらせた。

その光景を不安げに見守っていたオーチェが急に驚きと怒りの声を上げる。

「リーシャ、その顔は……!?エミリオ!どうなってるのさ!」

(顔……?わたし、何か……へん?)

わからずボンヤリとエミリオを見上げると、彼は言いづらそうに口を開いた。

「リーシャ、自分の手を見てください」

エミリオがリーシャの手に視線を落とす。

気になって、リーシャは自分の手を視界の中心に持ってきた。

「な、なに、これ……」

手に黒い染みのような点がついている。

「それは、呪いです。黒の斑点は悪霊がもたらす死の呪いなんです。このままだと、黒が全身に広がって……死んでしまいます」