自爆しないで旦那様!



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 リーシャの部屋に到着したエミリオは早速作業を開始した。

資料も何も見ずにスラスラと淀みなく魔術の光を描き始める彼は間違いなく秀才だ。

危機的状況なのは理解しているが、リーシャはキラキラしている光の集まりを見つめて思わず声を漏らした。

「キレイ……」

「エミリオくんが描くと魔術ってよりも芸術だよね。なんかカネになりそう」

「ラズは描けないの?」

「俺はむーりー。こっち系の魔術はド下手すぎて自分でも笑っちゃう」

エリマキトカゲと会話をしつつ大人しく待つこと一時間。

リーシャの部屋に完璧すぎる美しいペンタクルが完成した。

「守りの上に呪い返しも描きました。これである程度なら跳ね返すでしょう。なので今夜はなるべく、この部屋から出ないようにしてください」

「わかった。ありがとう」

「いえ……何度でも言いますが、元はと言えば僕のせいです。貴女が狙われた責任は僕にあります。ですからこのくらい、当然のことです」

「エミリオのせいじゃないよ」

「ですが、僕が存在しなければ、こんな事態にはならなかったはずです」

相当落ち込んでいるのか、エミリオはリーシャから目をそらして俯いた。

「僕は、いつもこうなんです。自分が造られなかった世界を仮想して、そちらの方が周りの人々にとって幸せだったのではないかと、つい考えてしまうんです。仮定の話をしたって、仕方がないのに……自分の存在を……自分の罪の大きさを、認めたくなくて……つい、考えてしまいます」

兵器だった頃から徐々に徐々に大きくなっていった罪の意識。

それは今でもエミリオを縛る。

「僕は……生まれてこなければよかった」

寂しげな声だった。

リーシャがハッと息を呑む。

エミリオはリーシャが何か言う前に早口で続けた。