「ふぅ……ただいまぁ」
「よっ。リッちゃんお帰り~」
やっぱり居た。
リーシャは窓辺の「彼」に視線を遣る。
「ただいまラズ。元気?」
「チョー元気」
明るく返事をしたのは何の変哲もないエリマキトカゲ。
名前はラズ。
リーシャが唯一会話できる動物であるが、リーシャのペットというわけではない。
強いて言うならば、いつの間にかリーシャの実家に棲みついていた「自称ペット」だ。
大学通いのためリーシャがアルブの町へ来た時、勝手に一緒にくっついて来てそのままリーシャの部屋に居る。
「なあなあ、腹減ったんだけど。今日のメシって何?」
エリマキトカゲは本来、虫を食べるらしいのだが、ラズはなぜかリーシャと同じご飯を欲しがる贅沢なトカゲだ。
「ロールキャベツだよ。さっきオーチェが言ってた」
「やったね!俺の好物!」
喜ぶラズの声を聞き、リーシャは溜息をついた。
「はぁ……ラズとはこんな簡単に会話できるのに……どうして他の動物だと上手くいかないんだろう」
「そりゃあ、俺がリッちゃんに合わせてやってるからに決まってるじゃん?俺ってばリッちゃんのために頑張ってんだぜ?」
「はいはい。いつものジョークね。聞き飽きた」
エリマキトカゲが魔術を使えるはずがない。
ラズがリーシャに合わせているなんて嘘だろう。
そう決めつけてリーシャはラズの言い分を冗談だと受け止めている。
「おーい、俺の努力をジョークにすんなっての。泣くよ?リッちゃんのベッドに涙ぶちまけちゃうよ?」
「勝手にどうぞ」


