自爆しないで旦那様!


「そうだ!リッちゃんは恋ってしたことある?あるなら是非是非、聞かせて欲しいの!マリーちゃんはまだだから、恋って憧れなのよ!」

「恋かぁ……。私も、ないかな……」

「あら?周りに一人も素敵な人がいなかったの?」

「うーん……実家にいた頃は、いいなぁと思う人ができても、オーチェがね……」

リーシャの恋路にはいつもラスボスの如くオーチェが登場する。

「リーシャ、あの男、僕よりも優秀なの?料理も掃除も洗濯もこなして仕事もできる男なの?リーシャのことを百の軍隊から護ることができる強靭な肉体と精神と魂を持った男なの?違うよね?なら君と付き合う資格はないから二度と会っちゃダメだよ。いいね?」

毎度こんな風に言われては「恋ってなんだっけ?」と考えてしまう思春期だった。

オーチェに脅されたくらいでアッサリ諦められる程度のものだったので、リーシャも未だ恋とは何かよくわかっていない。

「僕より弱い奴はおととい来やがれって感じだった」

「エミりんなら大丈夫よ!チェるチェると同じくらい強くてカッコ良くて優しいわ!」

ここでエミリオに話が戻る。


――貴女だから、心配なんです


真剣な彼の表情を急に思い出してリーシャは頬を赤らめた。

(エミリオのことは、好きだけど、それは恋では……)

違うと言い切れるだろうか。

まだハッキリと形をなしていない、ぽわんとしたものがリーシャの胸の内を漂う。

「でもリッちゃんがずっとウジウジしてると、エミりんガブッと食べられちゃうかもしれないのよ!」

「え……?」

「この前ね、マリーちゃん、見ちゃったの。エミりんが告白されてるところを!しっかりと!」

「告白……?女の子から?」

「そうなのよ。でもズバッとお断りしていたわ」

オーチェやラズと比べて、エミリオは自分が「兵器」であった過去と事実をかなり気にしている。

そのことや人付き合いが苦手なことも重なり、大学内ではほとんど一人でいる彼だが、だからといって異性から人気がないわけじゃない。

(エミリオ……告白されたこと、あるんだ……)

なぜか胸のぽわんがモヤモヤに変わったリーシャだった。