「僕は君のご先祖様……ドラゴシュと約束したんだ。僕らが滅茶苦茶にしてしまった美しい世界を、いつか取り戻すって。どれだけ時間がかかっても。僕には、時間だけはあるから……。たとえドラゴシュがいなくなっても、ドラゴシュの孫や、ひ孫、その先ずっと続く子孫に愛してもらえる世界を取り戻す。……そう、誓った」
オーチェは微笑む。
「だから君にこの場所を見せたかったんだ。これからもね、もっともっと、僕が君に美しいと思える世界を見せてあげる」
血に塗れることを運命づけられた殺戮型兵器とは思えない程に、オーチェの笑みはキラキラしていて、それがとても眩しくて、リーシャは思わず目を細めた。
「うん。見せて。……見たい」
(オーチェが美しいと思える場所、もの、存在、命、全てを……見てみたい)
きっとそれらは、とても優しくて、温かいはずだ。
「……凄いですね、オーチェは」
エミリオがホォと溜息をつく。
「僕なんて、嫌な思い出がある土地は、二度と訪れる気になれませんでした。もうそこが汚れてしまったように思えて。悲しくて。……ですが、変わることができるんですよね。こんなにも、美しく」
「そうだよ。来てみてどう?」
「良かったです。ありがとうございます」
エミリオの素直な感謝を聞き、オーチェは満足そうだ。
リーシャは爽やかな風が吹くこの丘を遠くまで見渡した。
「風が気持ちいいですね」
「そうね。今日が暖かくて良かった」
エミリオとリーシャがそんな会話をしていると。
「リーシャ」
オーチェに呼ばれて振り返る。
すると、リーシャの頭にポンと何かが載せられた。


