自爆しないで旦那様!


慌てて来たのに嘘だったと知り、エミリオは反省の色が見られないオーチェに殺気を向けた。

「オーチェ、もう少し普通の呼び出し方はできないんですか?」

「仕方ないでしょ。脅す方が確実だし楽なんだから」

「ラズみたいなこと言わないでください。それで?わざわざ休日に僕を呼び出した理由は何です?」

「君さ、確か空間転移魔術使えるよね?行きたいところがあるから送ってよ」

「簡単に言ってくれますね。僕は辻馬車ではないんですが」

「断るならもう二度と君をリーシャには会わせないよ」

「なっ!?」

「最近仲良しなんだって?リーシャから君との大学生活の話を聞いてるとイライラしてくるんだよね」

「貴方という人はっ……!」

リーシャに会えなくなるのは寂しい。

今のところ、エミリオにとってマリーの次に話しやすい女性である。

そもそも人付き合いが苦手で人間の友達が少ないエミリオにとって、リーシャの存在はとても貴重だった。

エミリオは唇を噛み締める。

「……事前に用意していないので、少々時間が掛かります」

「いいよ、そのくらい」

「行き先はどこですか?」

「アウリウの丘」

「なっ!正気ですか?」

「当たり前でしょ。君こそいつまであの地を厭うてるのさ。一緒に来てごらんよ。とても、美しいから」

アウリウの丘。

リーシャには聞き覚えのない場所だった。

エミリオはあからさまに嫌そうな顔をしたが、果たしてどんな場所なのだろう。

エミリオが空間転移陣を魔術の光で描き始める。

やがて細かな文字がちりばめられ、それは完成した。

「僕のそばに立ってください。移動します」

「リーシャ、おいで」

オーチェに呼ばれ、円になっている転移陣の中心に立つ。

すると魔術の光がいっそう強く輝き出した。