自爆しないで旦那様!


石ころが、家。

言われたことに口をあんぐりと開けたリーシャのことなど気にもとめず、ラズは何やら作業を開始する。

「えっと……丸描いて丸描いてグルグルちょんと……あぁ、クソッ。描きづらいっての。まあ、後は言えばいっか」

地面に指で何か描いてから、ラズはそこに青い石を置いた。

「我は真実を知る者なり。仮の姿を解き放ち、真の姿を現せ。いにしえより秘匿されし奇跡をここに」

ラズの落ち着いた声が石の上に落ちる。

すると青い石の形がグニャリと歪み、どんどんその姿を大きくしていった。

魔術だ。

リーシャがそう気づいた時には、石は形を変え終わり、二人の目の前に三角屋根の小屋が現れた。

「す、ごい……。今の、魔術だよね?」

「そう。魔術だよ。俺の家ね、持ち運びしてんの。普段は石に変身させててさ、入りたいとき元の形に戻す感じ」

「変身?家を?」

驚くリーシャを手招きしつつ、ラズは頷く。

「そういうことも習うんだよ、変身魔術総合学科では」

総合だからか、なんでもありか。

それにしても家を持ち運ぶってどうなのだ。

リーシャがエリマキトカゲのままラズの肩の上でポカンとしていると、ラズが小屋の扉を開けた。

「ようこそ、俺の家へ。リッちゃんが初めてのお客さんだからな、中が片付いてなくても文句言わないよーに」

ラズと一緒に小屋へと入る。

窓から差し込む日の光のおかげで、リーシャの目に室内の様子がハッキリと映った。

「うわぁ……」

まず驚いたのは、大きな棚にキッチリと並べられた沢山の小瓶。

狭い部屋のくせにこの棚がかなりのスペースを占めている。

棚の前には広い作業台。

その上には薬を調合するために使う様々な材料や道具が置かれていた。

「どう?ここには俺が調合で使う材料やレシピの全てが置いてあってさ。わりと自慢の部屋なんだよね」

「すごい部屋……。真面目に調合してるラズの姿がやっとイメージできた気がする」

「ハハッ。リッちゃんも調合魔術学部入れば良かったのに。そうすりゃ俺の後輩ってことで色々教えてあげられたよ?」

「私、薬の分量を量ったり計算したりするの苦手だから……無理」

「確かに、リッちゃんなら計算ミスって調合の途中で爆発させそう」

「失礼な!」

だが否定はできない。

リーシャがぐぬぬと悔しげに唸る。