エミリオがハッと目を見開いてリーシャに向き直る。
彼は申し訳なさそうな表情で語った。
「冷たかったですか?正しいと思ったことを述べたまでなのですが、冷たく感じられてしまいましたか……。それはすみませんでした。教えていただき、ありがとうございます。機微に疎いもので、ご迷惑をおかけしました」
「あ、いえ……その……」
至って真面目に謝罪と礼を言われ、リーシャの怒りはしゅるしゅると萎んだ。
嫌みの一つでも返ってくるかと思ったが、やっぱり「本の虫学科」の生徒だから真面目なのだろうか。
なんだか調子が狂う。
リーシャは何か言おうと言葉を探したが、先に彼が口を開いた。
「僕に指摘して下さったので、貴女にも僕から返さなければいけませんね。明日の午後、四限目の授業後に待ち合わせましょう。予定は空いていますか?」
「えっ」
「……何か予定が?」
「い、いえ!大丈夫です!」
「それは良かったです。僕でよろしければ手伝いますよ」
リーシャは耳を疑った。
慌てて聞き直す。
「本当ですか!?」
「はい。僕は、嘘は嫌いです」
「嬉しいです!ありがとうございます!!」
本当に嬉しくて真っ直ぐな笑顔を向ければ、なぜかエミリオが頬を染めた。
照れたのか、小さな声で捨て台詞を吐く。
「っ……今回だけですからね」
そして今度こそ早足で去ってしまった。
「ふふふ!良かったわねリッちゃん!」
「うん。マリーちゃんも、ありがとね」
こうして課題に一歩だけ希望を見出だしたリーシャだった。


