自爆しないで旦那様!


「……あ、貴女は、誰にでもこんなことをするんですか?」

ちょっと引きながらエミリオが身構える。

どうしてか、すぐに食べてくれそうにない。

「誰にでもはしないかな?マリーちゃんにはよく一口あげたりするけど」

「こんな誰もが通る屋外で、同性のマリーならばいざ知らず、僕のような男相手にあーんだなんて気軽にしてはいけません。カップルだと思われたらどうするんですか」

「え?別に私は恋人いないから誤解されて困る人なんて……あっ、もしかしてエミリオは恋人いる!?ごめんね、気づかなかった」

「いえ、いませんけど」

正直に即答してからエミリオは自分のうかつさを呪った。

「ん?なら良くない?」

キョトンとした顔のリーシャに瞳を覗き込まれる。

エミリオは内心で勢い良く叫んだ。

(食べさせてもらうだなんて、赤子じゃないんですから恥ずかしいじゃないですか!!しかもそれ、貴女が先程から使っているフォークですよね!?僕が使うことに貴女は一切抵抗がないんですか!?それともこのようなこと、人間ならば普通……?ごちゃごちゃ余計なことを思考してまう人工生命体の僕が間違っていると……!?)

顔が熱くなってきた。

正解が、わからない。

(あぁ……だから苦手なんです。人と関わるのは……)

他人ならば友達ならば恋人ならばと、相手によって決まった距離感があり、それを間違えると今までの関係性を壊しかねない。

取り敢えず今のエミリオはというと、自分を兵器だと知りながら怖くないと言ってくれたリーシャに嫌われたくない。

それが何より大事なことだった。

(ここで僕が断ったら、リーシャは……きっとションボリしますよね……)

その光景が頭に浮かんでしまい、エミリオは負けた。

もうどうにでもなれ!と思いつつバクッとミニハンバーグに食らいつく。

「どう?」

ワクワクしながら感想を求めるリーシャに、エミリオは口をモゴモゴと動かしながら小さな声で答えた。

「ん……美味しいです」

「やった!エミリオにも褒めてもらえた!お世辞じゃないよね?」

「不味ければ不味いと言いますよ、僕は」

リーシャが嬉しそうに笑う。

その笑顔にドクンと胸が高鳴り、赤らむ頬をパッとそらしたエミリオだった。