「喉、痛くない?今夜はちょっと乾燥してるから、水でも持ってこようか?ちょっと待っててね」
そのまま離れて行こうとしたリーシャに、オーチェは手を伸ばす。
彼の手はしっかりとリーシャの腕を掴んだ。
「オーチェ……?」
「行かないで……。そばにいて……」
手を掴まれたリーシャは彼の甘えに頷くと、ベッドのそばに椅子を引き寄せて腰かけた。
「オーチェ、大丈夫?」
「うん。君がそばにいると、だいぶマシになる」
力無く微笑み、オーチェは小さく吐息をこぼす。
「ねえ、リーシャ。僕が……殺戮型の兵器であることは、話したよね?」
「ええ……」
「殺戮型は攻撃力に特化していて、とにかく戦闘能力が高いんだ。僕一人で、百人は余裕さ。時間制限がないなら軍人千人が相手でも勝つ自信がある。それが殺戮型である“僕”という存在なんだ。だから……実際、何人も何人も、この手で殺して、殺して、殺し過ぎてっ……殺した奴らの顔が、夢に出てくるのさ」
泣きもせず自嘲もせず、ただ静かにオーチェは語る。
「殺し過ぎて、いちいち顔なんて記憶してないはずなのに……僕への罰のように、ずっと、繰り返し、殺してきただろう血塗れの顔が……いくつもいくつも……」
「眠るのが……怖い?」
「怖くはないよ。ただ……苦しい」
オーチェは自分の頭を手で押さえた。
「これが、僕の罪なんだと、突きつけられているようで……うっとうしい」
それから、オーチェはいきなり激昂した。
「今更、どうしろって言うのさ!!僕に……どうしろとっ!!」
オーチェの心の声が初めてリーシャの耳に響く。
それは不器用な悲鳴に聞こえた。
「なら、もう、ナイフを持たないようにしたら?少しは、違うかも……」
「それは無理だよ。君を護るために、刃は必要さ」


