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そんな事があった夜のこと。
ふと目が覚めてしまったリーシャは、喉がカラカラなことに気がついてキッチンへ水を飲みに行った。
まだ夜明けまでかなり時間がある。
もう一度ベッドに入って寝よう。
そう思って廊下を歩いていたのだが。
「うっ……ぐっ、う、あぁ……!」
オーチェの部屋からオーチェの苦しそうな声が聞こえ、リーシャは驚いて彼の部屋の扉へと近寄った。
「うぅ……あ、あぁあっ……」
(また……うなされているの……?)
眠っているオーチェがたまにうなされていることをリーシャは知っていた。
しかしここまで酷いのは二人で暮らすようになって、リーシャが知る限り初めてだ。
「……入っても、いいかな?」
心配だから、そばに行きたい。
リーシャはそっと扉を開いた。
暗い部屋の中、ベッドに横たわり苦し気に息をするオーチェが見える。
「ぐ、うっ、あ、あああぁっっ!!」
「オーチェ!?」
尋常でない叫びを聞き、リーシャは慌ててオーチェに近寄った。
「オーチェ!大丈夫!?」
「っ……はぁ……はぁ……」
荒い呼吸を繰り返し、オーチェはうっすらと瞼を上げる。
「リー……シャ?」
「ごめん、勝手に入って。声が聞こえて……心配で」
「声……?僕の?」
「うなされてたよ。自分だとわからない?」
「いや……なんとなく、わかるよ。嫌な夢、見てたから」
「すごく、ツラそうだった……」
リーシャの言葉を聞き、オーチェが黙り込む。
リーシャの目には、なんだか落ち込んでいるように見えた。
基本的にオーチェはリーシャに弱いところを見せない。
いつも強気で、ニコニコしている。
それなのに今は、別人のような暗い顔だ。
どうにか元気を取り戻してもらいたくて、リーシャはわざと明るい声を出した。


