自爆しないで旦那様!



***

この辺にいそうな気がする、とマリーに案内されてやって来た廊下にて。

キョロキョロしているマリーとリーシャの横を黒髪の青年が通りすぎた。

「あ、いたいた!エミりん!!」

黒髪青年を目にしたマリーが大声を上げる。

彼女はそのまま目当ての青年に飛びつく勢いで駆け寄った。

「エミりーん!!待って~なの!!」

「何ですか、マリー。うるさいですから静かにしてください。周りに迷惑です」

マリーの呼び掛けに応え、呆れたような眼差しの彼が振り返る。

不意に、リーシャと目があった。

バイオレットの綺麗な瞳がリーシャをジッと見つめる。

「……貴女は?」

「初めまして。口語魔術学科のリーシャです」

「初めまして、僕は古文書解読学科のエミリオです」

形式的な挨拶を済ませてから、エミリオはリーシャとマリーの顔を交互に見た。

「それで、貴女方は僕に何か用ですか?」

「お願いエミりん!リッちゃんを助けてあげて!エミりん、言語魔術得意でしょ?」

「確かに言語魔術は僕の得意分野ですが、彼女は僕とは異なる学科です。何か課題のことで悩んでいるなら僕に頼るのではなく同じ学科の方に相談した方が良いと思います。話はそれだけですか?なら僕は行きます」

感情のない声でツラツラと一方的にそれだけ言うと、そのまま歩き出そうとする。

(ちょっと!まだ私、何も言ってないんだけど!?)

彼の態度にリーシャはカチンときて呼び止めた。

「ちょっと待ってください!その態度、冷た過ぎませんか?もう少し話を聞いてくれても良いと思いますけど」